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「肥のあけぼの」の樹体乾燥による水分ストレスと果実品質


[要約]
「肥のあけぼの」は8月上中旬までに樹体乾燥による水分ストレスを与え、8月下旬から9月上旬にはゆるめ、9月中旬から再び強めることで高品質果実が生産される。

[キーワード]
高品質果実、高糖低酸、水分ストレス、肥のあけぼの

[担当]
熊本農研セ果樹研・常緑果樹部

[連絡先]電話0964-32-1723	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
「肥のあけぼの」は、果皮色が濃く、シートマルチ栽培により高糖度の果実生産が可能である。しかし、夏季より強い樹体乾燥による水分ストレスを与えるとクエン酸含量の高い果実となり、減酸を待って収穫期を遅らせると、浮き皮が発生し腐敗が多くなる。

そこで、生育期間中の品質および水分ストレスを調査し、収穫時の果実品質との関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 生育期間中と収穫時の果実品質との関係は、糖度(Brix)は8月上旬より相関が高く、クエン酸は8月中旬までは相関はないが、8月下旬から収穫期に近づくにつれ高くなることから糖度は8月上中旬に高くなっていることが望ましく、クエン酸は、9月中旬までに下げておくことが必要である(表1)。

  2. 8月から収穫時までの水分ストレスと果実品質の関係は、糖度、クエン酸ともに水分ストレスが大きいほど高くなる傾向があり、高糖低酸果実生産のための水ポテンシャル(Max)は-0.7〜-0.8である(表2)。

  3. シートマルチ栽培では、被覆期間の経過とともに次第に水分ストレスは大きくなるが、8月下旬に水分ストレスが強すぎると高酸果実になる傾向がある(図1)。

  4. 9月中旬からの水分ストレスが弱いと高糖度になりにくい。(図1

  5. 乾燥した年の少量かん水(3t/10a程度)の場合、水分ストレス上昇が緩和しにくいので1旬程度早めのかん水開始が望ましい(表3)。

  6. 水分ストレスと浮き皮に明瞭な関係はなかったが、着色期前後のかん水により浮き皮を助長する傾向がある(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 水分ストレスは土壌水分との関連が強いため、ほ場に応じた土壌水分管理が必要である。

[具体的データ]

表1 収穫時と生育期間中の糖度およびクエン酸の相関関係(2001年)


表2 水ポテンシャル(Max)と果実品質の相関関係


図1 品質区分別の樹体水分ストレスの推移(2002年)


表3 かん水が水ポテンシャル(Max)と果実品質に与える影響(2002年)

[その他]
研究課題名:低樹高・少資材によるニューセラー系温州ミカンの品質保証果実生産技術
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :2001〜2002年度