弱樹勢「不知火」へのシィクワシャーの根接ぎによる樹勢強化法
- [要約]
- 樹勢の弱いカラタチ台の「不知火」にシィクワシャーを根接ぎすることで、幹周、樹容積が拡大し、樹勢強化と収量増加が図られ、果汁のクエン酸はやや低くなる。根接ぎ法では、主幹部への直接根接ぎと台木部への間接根接ぎとに差はない。
- [キーワード]
- 「不知火」、シィクワシャー、根接ぎ
- [担当]
- 熊本農研セ果樹研・常緑果樹部
[連絡先]電話0964-32-1723
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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カンキツ「不知火」は、県内で栽培面積が急速に増加しているが、露地栽培において樹勢低下に伴う収量の減少や果実品質の低下が問題となっている。
そこで、強勢台木であるシィクワシャーを1年生カラタチ台「不知火」の主幹部と台木部に根接ぎし、樹勢、収量及び果実品質に及ぼす効果を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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幹周、樹容積は、生育年次を経るに従い、シィクワシャーの根接ぎがカラタチ台に比べ大きくなる。シィクワシャーの根接ぎ法では、主幹部への直接根接ぎと台木部への間接根接ぎとに差はない(表1)。
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樹の生育では、シィクワシャーの根接ぎは、地上部の枝・葉の増加はもちろん、地下部の細根・小根・中根の増加が大きい(表2、表3)。
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収量はシィクワシャーの根接ぎで多く、カラタチ台との樹冠拡大の差が収量の差となる(表4)。
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シィクワシャーの根接ぎでは、糖度(Brix)はカラタチ台と差はなく、クエン酸はやや低い傾向にある(表4)。
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以上のことから、シィクワシャーの根接ぎは、樹勢強化(幹周、樹容積)、収量増加に大きく寄与するものと考えられる。
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[成果の活用面・留意点]
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根接ぎの効果が現れるまで2〜3年かかるため、樹勢の低下していない幼木などに早めに実施する方が効果的である。
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強勢の台木を根接ぎすると、樹勢が旺盛になり、果実品質の低下がみられることがあるので、強剪定を控え適正着果に努める。
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[具体的データ]
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表1 幹周および樹容積の推移(平成10年〜14年)

表2 樹の部位ごとの生育状況(地上部)

表3 樹の部位ごとの生育状況(地下部)

表4 収量および果実品質(平成12年、13年度)
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[その他]
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研究課題名:「不知火」の栽培技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :1997〜2002年度