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早期型ハウスミカンの加温前の樹体中デンプン含量に影響を及ぼす要因


[要約]
加温前の枝中デンプン含量が低いと加温後の着花量が少なくなる。加温前の枝中デンプン含量は、硬くてち密な土壌ほど高く、また、夏秋季の葉中全窒素の増減量が少ないほどこの間の増加量が多くなり加温前に高くなる。

[キーワード]
ハウスミカン、葉分析、土壌分析、花芽分化、デンプン

[担当]
大分柑橘試・研究部

[連絡先]電話0978-72-0407	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
早期型ハウスミカンにおいて、加温前の結果母枝の枝中デンプン含量が低い場合あるいは葉中全窒素含量が高い場合に、平年並みの加温時期では加温後の着花量が少なくなる傾向がある。そこで、これら成分の多少に関係する要因を調査し、加温後の着花を安定させる技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
  1. 加温前の枝中デンプン含量が10%を下回る場合は、結果母枝当たりの全花数が1個程度以下となり着花量が少なくなる(図1)。

  2. 枝中デンプン含量は、pF1.5における土壌の液相率および孔隙率との間に負の相関が、逆に、固相率および仮比重との間に正の相関が認めらる。すなわち、硬くてち密な土壌ほど枝中のデンプン含量は高くなる(表1)。

  3. 葉中全窒素含量は、9月上旬から10月の加温前までの間に減少する場合と逆に増加する場合があり、9月上旬に高いものほどその後の増加量も多い。一方、枝中デンプン含量は9月上旬から10月の加温前までの間に全園地で増加するものの、増加程度は9月上旬のデンプン含量に関係なく園地間で異なる(図2)。

  4. 9月上旬から10月の加温前までの間の葉中全窒素の増減量と枝中デンプンの増減量との間には、高い負の相関関係があり、葉中窒素の増減量が少ないほど、枝中デンプンの増加量は多くなる。着花不良(結果母枝当たりの全花数が1個以下)は、窒素の増加量が多く、デンプンの増加量が少ない場合にみられる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 加温前の枝中のデンプン含量が高ければそれに応じて加温後の着花量が多くなるということではなく、デンプン含量が極端に低い場合や葉中全窒素含量が極端に高い場合には、加温後の花数が少なくなる確率が高くなることを意味している。

  2. 経験的に、立枝や太い母枝は加温後の花数が少なくなるが、このような形質の母枝には分析結果が反映されにくい。

  3. 葉中全窒素含量の多少並びに増減には、根域の深さや根量さらに土壌水分が関与しているものと考えられる。

[具体的データ]

図1 枝中デンプン含量と加温後の着花量との関係(2002年産)


表1 枝中デンプン含量並びに葉中全窒素含量と園地要因間の単相関係数(2001年度)


図2 葉中全窒素含量の増減と枝中デンプン含量の増減との関係(2001年度)


図3 夏秋季における樹体中成分含量の変動(2001年度)

[その他]
研究課題名:暖地温州ミカンの少資材・低樹高を基幹とした品質保証果実生産技術
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :1999〜2003年度