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両親の果汁pHによる選抜基準を超えるビワ交雑実生の出現率予測


[要約]
ビワの果汁pHの家系平均値は平均親値と親子回帰式により高い精度で予測でき、選抜基準を超える交雑実生の出現率も精度よく予測可能である。

[キーワード]
ビワ、果汁pH、選抜、育種

[担当]
長崎果樹試・育種科

[連絡先]電話0957-55-8740	
[区分]果樹・育種、九州沖縄農業・果樹	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
ビワの交雑育種において、合理的な交雑計画を立てるには、主要な果実形質の遺伝様式を明らかにし選抜基準を超える個体の出現率を予測できることが望ましい。そこで、果汁の酸含量と相関の高いpHについて、14品種・系統を交雑親とする21家系、各9個体を供試して、家系平均値の予測の可否を検討するとともに、家系内分散を推定し、pHの遺伝子型値が選抜基準を超える交雑実生の出現率を推定した。

[成果の内容・特徴]
  1. 家系平均値の平均親値(両親の平均値)に対する親子回帰式として、y=-0.447+1.111xが得られる(図1)。

  2. 子個体集団の全分散のうち、家系間分散は全体の20%しかなく、家系内分散が大半を占める。家系間分散のほとんどは回帰によって説明される分散が占めるので、家系平均値はほとんど平均親値のみで決定されると言える。また、家系内分散の中では環境分散がその60%を占める(表1)。

  3. 選抜基準を超える個体の出現率を算出すると、平均親値が4.30の場合、4.23以上(滴定酸含量0.30g/100ml以下に相当)の個体の出現率は67%であるが、4.56以上(同0.20g/100ml以下)の個体の出現率は15%しか期待できない(図2)。

  4. 約800個体からなる交雑実生集団において、果汁pHの観察値と理論値の分布を比較すると、両者はおおむね一致する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 平均親値から選抜基準を超える果汁pHを持つ子個体の出現率が予測できるので、合理的な交雑計画が可能となる。

  2. 他の量的形質についてもこの解析法が適用できれば同様の予測が可能である。

[具体的データ]

表1 推定された各分散成分の値


図1 果汁pHにおける平均親値と家系平均値との関係


図2 pHの遺伝子型値が選抜基準を超える交雑実生の出現率の推定値


図3 交雑実生集団における観察値と理論値の分布の比較

[その他]
研究課題名:ビワの育種
予算区分 :指定試験
研究期間 :1973年度〜