イチゴ高設栽培におけるpFセンサー制御による排水の出ない水管理
- [要約]
- 保水性の高いバーク堆肥・ピートモス等の配合培地を用いたイチゴ高設栽培において、pFセンサーにより活着後pF1.5に制御すれば、排水を出すことなくかん水量を節減した効率的な水管理ができ、その際の吸水量から同培地における最適かん水量を算出できる。
- [キーワード]
- イチゴ高設栽培、pFセンサー、排水
- [担当]
- 佐賀農業セ・土壌環境部・土壌・肥料研究室
[連絡先]電話0952-45-2141
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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高設栽培システムでは、隔離栽培のため地下からの水分の供給がないこと、1株当たりの培地量が地床に比較して少ないことから、かん水量はやや過剰となりやすい傾向がある。また、土耕と比較して培地の緩衝能は小さいため、地域によっては水道水の利用もみられ、生産コスト面からも効率的な水管理が望まれる。そこで、保水性の高いバーク堆肥・ピートモス等の配合培地を用い、pFセンサーによる簡易で安定かつ効率的な土壌水分管理を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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使用する培地の組成は日向ボラ土35%、赤玉土15%、バーク堆肥10%、ピートモス25%、ヤシピート10%、木炭5%とし、培地量は4.8L/株とする。
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かん水には、点滴ドリップチューブを使用する。
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pFセンサーを株間深さ10cmに埋設し、かん水タイマーとかん水ポンプの間に接続する。pFセンサーの設定値はpF1.5とし、かん水時刻(9:30、11:30、13:30、15:30)に培地pFが設定値を超えた場合にのみ、ポンプが作動しかん水する。1回のかん水量は0.9t/10a(1株当たり110ml)とする。
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1、2および3の条件で管理することで培地のpFは安定的に保たれ、排水は全く排出されない(図1、図2)。このとき、慣行に対し、活着後生育期間を通して、かん水量を約19%減じることができるが、栽培槽内にとどまる水量(吸水量=Σ(かん水量-排水量))は慣行とほぼ同等であるため、減じたかん水量は慣行の排水量にほぼ相当する(表1)。
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収量は慣行に対して同等程度である(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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本成果は品種「さがほのか」を緩効性肥料を用いて栽培し、得られた結果である。
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本成果で得られたpF1.5制御のかん水量/株/日は、通常かん水においても最適かん水量の目安として活用できる。
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培地の種類や組成、培地量が異なる場合や気象条件によっては、かん水量および排水量は変化すると考えられる。
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pFセンサーはテンシオメーター方式であるため、使用開始時の気密性の調整に十分留意する。
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[具体的データ]
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図1 日かん水量と排水量の推移(日かん水量を正、排水量を負で示した。)

図2 かん水様式の違いが培地水分の動態に及ぼす影響

図3 かん水様式の違いと商品果収量

表1 pF制御区におけるかん水量、排水量および月別吸水量の推移
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[その他]
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研究課題名:イチゴ新品種「さがほのか」の特性を活かした育苗法の開発と新栽培管理技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2002年度
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