沖縄における軟X線照射花粉を利用した種なしスイカの作型と品種
- [要約]
- 亜熱帯沖縄における軟X線照射花粉の授粉による種なしスイカの作出には、作型は早熟、品種は「富士光」が適する。保存花粉の利用も可能であり、短期保存は乾燥条件下の摂氏5度で、長期保存は酢酸エチルに浸漬して摂氏-20度で行う。
- [キーワード]
- 種なしスイカ、軟X線、沖縄、花粉保存
- [担当]
- 九州沖縄農研・野菜花き研究部・野菜育種研究室、野菜茶研・果菜研究部・ウリ科育種研究室
[連絡先]電話0942-43-8271
[区分]九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜育種
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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沖縄のスイカ生産は栽培面積が約200haで、促成、早熟および普通の3作体系によって1月から8月まで行われている。しかし、最近のスイカ価格は低迷しており、商品の高品質化、ブランド化による高収益営農が一層求められている。そこで、野菜茶業試験場が開発した軟X線を用いた新しい種なしスイカ作出技術を亜熱帯地域である沖縄に適用する可能性を探り、さらに実用化に向けた技術の確立を図る。
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[成果の内容・特徴]
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沖縄における軟X線照射花粉の授粉による種なしスイカの作出には、品種としてシイナが小さく、果実品質に優れる「富士光」が適する(表1)。
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種なしスイカは種ありスイカと同等の品質になり、早熟作型が最も適する。普通作型では着色シイナが多く発生し、促成作型では白色シイナが大きく目立つためやや不適である(表2)。
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保存花粉を用いた場合は果重がやや小さくなるが、非保存花粉を用いた場合と同等の種なしスイカが得られる(表2)。交配時にフルメット液剤10ppmを子房に塗布すると、着果しにくい条件でも高い着果率が得られるため悪天候時あるいは保存花粉による交配に有効である。
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雄花の短期保存は、乾燥剤(シリカゲル)を入れたシャーレに密封し、摂氏5度で保存すると高い発芽率を保ち、1週間の利用が可能である。シリカゲルは保存する雄花重量の10倍以上を入れるのが適当である(表3)。また、花粉の長期保存は酢酸エチルに浸漬し、摂氏-20度で保存するのが有効である(図1)。
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[成果の活用面・留意点]
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軟X線照射は800Gyで行う。
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種なしスイカのシイナの大きさには品種間差があり、「富士光」の他に「富士光TR」がシイナが小さく種なしスイカ作出に適している。
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正常花粉の混入を避けるため、ハウスに防虫ネットを張るか交配時に燻蒸剤を焚く必要がある。また、両性花は用いない。
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特許登録(第3376553号)されているので、生産販売にあたっては特許実施契約が必要である。
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[具体的データ]
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表1 軟X線照射花粉の受粉による作出した種なしスイカの果実特性

表2 種なしスイカの果実特性

表3 軟X線照射花粉の発芽率に及ぼす保存日数およびシリカゲル量の影響

図1 有機溶媒の違いによる軟X線照射花粉の発芽率
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[その他]
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研究課題名:沖縄における軟X線照射花粉を利用した種なしスイカの作型と品種
課題ID:07-01-08-01-05-02
予算区分 :(亜熱帯野菜・花き)
研究期間 :1999〜2002年度
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