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サヤインゲンの高温による落花と変形莢の発生


[要約]
サヤインゲンでは開花前10日頃の高温による花粉稔性低下あるいは、開花前日および当日の高温による花粉管伸長阻害のため不受精となり落花する。開花後の高温は受精した胚珠の発育を阻害し、変形莢を発生させる。

[キーワード]
サヤインゲン、高温、花粉稔性、花粉管伸長、不受精、変形莢

[担当]
国際農研・沖縄支所・環境ストレス耐性研究室

[連絡先]電話0980-88-6108	
[区分]九州沖縄農業・野菜花き	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
熱帯・亜熱帯地域では、高温ストレスのため作物の生産が不安定である。果菜類において生殖生長期に発生する高温障害は収量に大きな影響を及ぼす。しかし、高温により影響をうける生殖生長期の生育生理については不明な点が多い。サヤインゲンでは高温になると収量が減少するが、それは落花や変形莢の発生が関与している。そこで落花や変形莢の発生要因を花粉稔性、胚珠発育などの発育生理の視点から検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. サヤインゲンは夏期の高温条件下では、着莢率が低下し、変形莢が出現するため良莢収量が減少する(図1)。

  2. 開花前10日頃の高温は花粉稔性を低下させる(平成11年度国際農業研究成果情報)。それは花粉1核期の葯組織のタペート細胞の小胞体異常を引き起こし、タペート細胞の崩壊時期が早まることに起因する(図2)。

  3. 花粉稔性が低くなると充実花粉が減り、葯が裂開せず、不受精の原因となる。

  4. 開花前日および当日の高温は、花粉の成熟に影響を与え、子房内での花粉管伸長を阻害する(図3)。

  5. 変形莢の発生は、花粉管が花柄側の胚珠まで届かないため胚珠が不受精となること、及び開花後の高温により受精した胚珠が生育不良を起こすことが原因である(図4)。

[成果の活用面・留意点]
本研究で扱う高温とは、ほ場条件下で生殖生長期におけるサヤインゲンの収量が影響を受ける摂氏約28度以上の温度である。具体的データは品種`ケンタッキーワンダー'に関するデータである。

[具体的データ]

図1 平均気温と着莢率、収量の関係


図2 花粉1核期の葯内のタペート細胞の小胞体


図3 高温処理後の子房内の花粉管進入胚珠率の変化


図4 ほ場で採取した変形莢における子房内の位置別の胚珠の生育

[その他]
研究課題名:サヤインゲン等の高温ストレス耐性に関する生理生化学的特性評価
予算区分 :基盤、法人プロ、生研機構(新技術新分野)
研究期間 :2001〜2005年度


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