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有機栽培温州ミカンの病害虫防除対策


[要約]
温州ミカンの有機栽培を実施するうえで、完全無農薬栽培は不可能であるが、JASの有機栽培基準で定められたボルドー液、水和硫黄剤、マシン油乳剤を適期に使用することで経営的に持続可能な栽培を行うことができる。あわせて、ゴマダラカミキリ、カイガラムシ等の捕殺、そうか病罹病枝葉除去等の耕種的対策が重要である。

[キーワード]
温州ミカン、有機栽培、ボルドー液、水和硫黄剤、マシン油乳剤、耕種的対策

[担当]
佐賀果樹試・病害虫研

[連絡先]電話0952-73-2275	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
JAS法において有機栽培で使用できる農薬(天然物由来のもの)が示されているが、具体的な病害虫防除法については明示されていない。そこで、有機栽培ミカンの効率的な生産体系を確立するために、具体的な防除対策を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 完全無農薬栽培では、そうか病、ミカンサビダニ等が多発し商品化できる果実はほとんど得られないため経営が成り立たない(表1)。

  2. そうか病が多発すると商品化率は著しく低下する(表1)。このため、ボルドー液を3月中旬、4月中下旬(展葉初期)、5月下旬〜6月上旬(落弁期)の計3回用いることが重要である(表1表2)。

  3. ミカンサビダニが多発すると商品化率は著しく低下する(表1)。このため、水和硫黄剤を6月上中旬、7月下旬の計2回用いることが重要である(表1表2)。

  4. カイガラムシおよびミカンハダニ発生時にはマシン油乳剤を用いる(表2)。

  5. 防除効果を向上させるためには、ゴマダラカミキリ、コナカイガラムシ類等の捕殺、そうか病罹病葉や黒点病の伝染源である枯れ枝の除去、チャノキイロアザミウマに対する忌避効果があるタイベックシートの設置等の耕種的対策が重要である。具体的な実施時期については表2を参照のこと(表2)。

  6. 表2に示す防除体系を組むことにより、黒点病、灰色かび病、チャノキイロアザミウマの加害等で一般流通のものに比べるとやや見劣りするものの、9割以上の果実を生協を通じて販売可能な果実を生産できる。一般流通に比べて高単価で取り引きされた場合、高収益が得られる(表1)。

  7. 肥料については菜種油粕、魚粕等を元肥および追肥用に用いる。また、果実体質の強化と腐敗防止を目的として、有機石灰を2月に施用する。さらに、発根促進および土壌改良を目的として収穫後〜冬期に完熟堆肥を施用する(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. JASの有機栽培基準に基づく栽培法を志す生産者および生産団体で活用できる。

  2. 表2に示す防除要否については十分留意すること。

[具体的データ]

表1 温州ミカンにおける有機栽培が害虫による果実被害、商品化率、収益に及ぼす影響


表2 有機農産物認証制度(JAS法)に対応した温州ミカンの栽培を可能とするための病害虫防除体系

[その他]
研究課題名:温州ミカンにおける有機栽培法の確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成11〜13年


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