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大分県におけるコムギ黄斑病の発生と発病程度の品種間差異


[要約]
県内のコムギ栽培圃場において葉枯れ症状を呈する病害が発生し、Pyrenophorat ritici-repentisによる黄斑病と確認された。本病の発病程度はコムギ品種間で差異が認められ、主要3品種における発生はチクゴイズミ、農林61号、イワイノダイチの順に多い。

[キーワード]
コムギ黄斑病、品種間差異、チクゴイズミ、農林61号、イワイノダイチ

[担当]
大分農技セ・植物防疫部

[連絡先]0978-37-1141	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
2000年頃から大分県野津町のコムギ栽培圃場において、5月以降急激に下葉から枯れ上がる症状が発生し、現地では問題となっていた。そこで、その原因を特定するとともに県内各地の発生実態を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 本病害は、下葉を中心に周縁部が淡黄色、中央褐色で楕円形の小斑点を生じる(写真1)。のちには拡大して灰褐色楕円形ないし紡錘形の斑点となり、さらに融合した不整形病斑となる(写真2)。また、稈にも楕円形または紡錘形の黄褐色病斑を生じる。

  2. 病原菌の分生子の形態は、円筒形で頂部鈍頭、下端は円錐形で蛇頭状を呈する(写真3)。またその大きさは117.8〜149.5μm×16.4〜18.4μm(表1)であることから、本菌はPyrenophora tritici-repentisと同定され、本病害はコムギ黄斑病であることが確認された。

  3. 大分県大野郡、宇佐市および中津市で発生が確認され、県内の広範囲に発生している。

  4. 本病は4月上旬に初発生し、その後下葉を中心に病斑が拡大して、5月にはいると急激に下葉から枯れ上がる。

  5. 本病の発病程度は品種間で差異がみられる。チクゴイズミ、農林61号、イワイノダイチの順に発病程度が高い。県内における主要3品種の中ではイワイノダイチが最も発病が少ない(図1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 種子伝染は明らかにされていないが、本病原菌と同属の菌によるオオムギ斑葉病および網斑病は種子伝染するため、本病も種子伝染する可能性があるため、多発生した圃場の種子は使用しない。

  2. 多発生が確認された地域では、発病の少ない品種の作付けを検討する。

[具体的データ]

写真1 初期病斑


写真2 融合した大型病斑


写真3 病原菌の分生子


表1 分生子の形状および大きさ


図1 コムギ黄斑病の品種別発病差異(2002年)

[その他]
研究課題名:農作物の病害虫防除技術
予算区分 :県単
研究期間 :2002年度


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