大分県におけるIris yellow spot virus(IYSV)によるトルコギキョウえそ輪紋病(仮称)の発生
- [要約]
- 2002年3月、大分県国東町の施設トルコギキョウに葉の黄化を伴う激しい輪紋やえそ症状が発生した。病原ウイルスはIYSVと同定され、えそ輪紋病(仮称)であった。圃場内雑草のうちタネツケバナがIYSVに感染する。
- [キーワード]
- トルコギキョウ、IYSV、えそ輪紋病、ネギアザミウマ、タネツケバナ
- [担当]
- 大分温熱花研・研究指導部、九州沖縄農研・病害遺伝子制御研究室
[連絡先]電話0977-66-4706
[区分]九州沖縄農業・病害虫、野菜花き
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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花き類では品目や品種の移り変わりが早いため病害虫に関する資料が不足する場合が多く、症状から原因を特定することが困難な場合が多い。トルコギキョウの生産現場で問題となったウイルス症状について、原因を究明し防除対策の資料とする。
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[成果の内容・特徴]
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発生圃場から採取したトルコギキョウから、電子顕微鏡観察とRT-PCR法によりIYSVが検出され(図1)、えそ輪紋病(仮称)であることが明らかとなった。
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トルコギキョウの品種`ミラ・マリーン4'では上位茎葉に黄化を伴った激しいえそ症状が、`浜の雪'では大型の輪紋症状と葉の枯れ上がりが主な症状である(図2)。
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えそ輪紋病(仮称)の発生はトルコギキョウを栽培している3圃場で確認された。3圃場ではいずれもアザミウマ類が多発生しており、アザミウマ類による被害株率は100%であった。また、本病の多発生圃場ではネギアザミウマが主体であった(表1)。
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RT-PCRによる検定の結果、本病が発生している圃場で採取したえそ斑が認められる雑草のうち、タネツケバナがIYSVに感染していることが判明した。また、トルコギキョウから分離したIYSV株をタネツケバナに接種した結果、えそおよび輪紋症状が再現され、RT-PCR法によりIYSVが再検出された。このことから、タネツケバナがIYSVの感染源となり得る(図3、図4)。
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[成果の活用面・留意点]
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類似の病徴を示すウイルスが他にもあり、病徴からIYSVであることは判断できないので、診断は専門機関に依頼する。
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発病株を除去する。
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タネツケバナは感染源となる可能性があるので、発生に注意し除草に努める。
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IYSVは、国内ではこれまでにアルストロメリア、タマネギ、バルビネ、アマリリス、クリビア等でも発生が確認されているので、他の品目での発生にも注意する。
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[具体的データ]
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図1 IYSV用プライマーを用いたRT-PCRの結果

図2 ミラマリーン4の病徴

図3 雑草のIYSV検定結果

図4 IYSV感染タネツケバナの病徴

表1 大分県国東町のトルコギキョウにおけるIYSVの発生状況とアザミウマの種類
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[その他]
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研究課題名:花き類における新病害の同定および対策
予算区分 :県単
研究期間 :長期
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