チリカブリダニの利用によるイチゴのハダニ類の防除
- [要約]
- 栽培初期(ビニル被覆後)に殺ダニ剤を使用した後にチリカブリダニを放飼し、その後は、1〜2ヶ月の間隔で追加放飼を行うことで、ハダニ類を栽培後期まで低密度に抑制できる。
- [キーワード]
- イチゴ、殺ダニ剤、チリカブリダニ、ハダニ類、放飼、低量放飼
- [担当]
- 鹿児島農試・病虫部
[連絡先]099-268-3231
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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イチゴ栽培におけるハダニ類は、繁殖能力が非常に高いことに加え、薬剤抵抗性が発達しやすいため防除が困難な害虫である。近年、減農薬栽培が強く求められ、ハダニ類の捕食性天敵であるチリカブリダニの使用を検討してきたが、効果のある方法は6000頭/10aを4回放飼(計24000頭放飼)であったため、高コストとなり、普及性に問題があった。そのため、低量放飼によるハダニ類の防除効果について検討した。
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[成果の内容・特徴]
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栽培初期(ビニル被覆後)に殺ダニ剤を使用した後にチリカブリダニを放飼し、その後は、定期的に追加放飼を行うことで,イチゴのハダニ類に対して防除効果が高い。
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チリカブリダニの初回放飼は、ビニル被覆後に殺ダニ剤(ビフェナゼートフロアブル)を使用し、苗から持ち込んだハダニ類を極力、低密度にした後とする。
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チリカブリダニの追加放飼の間隔は約1〜2ヶ月とし、1回当たりの放飼量は10a当たり4000頭を基本とする。
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この体系でハダニ類は、栽培期間中低密度で推移し(図1)、化学薬剤のみの慣行防除に比べても薬剤散布回数が減少した(図2)。また、ハダニ類が発生していた地点では、チリカブリダニの捕食によりハダニ類が減少した(図3)。よって、この体系でハダニ類を長期間抑制できる。
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[成果の活用面・留意点]
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チリカブリダニを利用する防除体系では、アブラムシ類対策としては粒剤施用、チリカブリダニ放飼直前、放飼後のハスモンヨトウ対策としてはIGR剤、BT剤を使用する。
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チリカブリダニ放飼直前、放飼後はチリカブリダニに対して影響が強い有機リン系、合成ピレスロイド系、カーバメート系の殺虫剤は使用しない。
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チリカブリダニを放飼する前は、ハダニ類を簡易調査法(2002年度成果情報)をもって調査し、ハダニの発生が多い場合は化学薬剤防除を行う。
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[具体的データ]
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図1 ハダニ類に対するチリカブリダニの効果(2001年)

図2 化学薬剤のみで防除を行った場合のハダニ類の推移(2000年)

図3 ハダニ発生地でにおけるハダニ類とチリカブリダニの密度推移(2001年)
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[その他]
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研究課題名:施設野菜病害虫の環境保全型総合管理技術の確立
予算区分 :助成
研究期間 :2000年度
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