タバコカスミカメによる施設トマトの被害
- [要約]
- オンシツコナジラミの捕食性天敵でもあるタバコカスミカメの加害により、トマトの茎や葉柄の周囲を丸く取り巻くようなリング状の傷ができ、傷の部分から折損し易くなる。本種は成幼虫とも、主に株上部に寄生する。
- [キーワード]
- タバコカスミカメ、Nesidiocoris tenuis、トマト、寄生部位
- [担当]
- 鹿児島県農業試験場・病虫部
[連絡先]099-268-3231
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]科学・参考
-
[背景・ねらい]
-
天敵防除を中心とした総合防除体系の促成栽培トマトにおいて、栽培後期の5月下旬から、トマトの上部茎の一部で、数ミリ幅で茎の周囲を丸く取り巻くようなリング状の傷がみられ、ひどいものはカルス状になり、割れるものもみられた。そこで、本症状の発生に関与していると考えられるタバコカスミカメによる被害再現を試みるとともに、本虫のトマト上での寄生、加害状況について明らかにする。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
発生がみられたカスミカメはタバコカスミカメNesidiocoris tenuis(Reuter)である(岡山大学の安永智秀博士が同定)。
-
このカスミカメをネットで囲ったトマト茎に放飼し、被害の再現試験を行った結果、現地でみられたものと同じ被害が認められ(図1)たことから、本種による加害である。
-
幼虫、成虫とも株の上部ほど寄生が多い傾向が認められ、生長点を含む上部2節の寄生数が多い。特に、幼虫は生長点付近に寄生が多い(表1)。
-
成虫は茎ならびに葉・葉柄とも寄生がみられるが、幼虫は葉、葉柄の寄生は少ない(表1)。
-
リング状の加害痕は茎、葉柄とも発生する(表1)。タバコカスミカメが茎の上部に寄生、加害するため、カスミカメの密度増加、茎の伸長とともに、加害痕は次第に下部から上部に広がっていく。
-
茎をリング状に取り囲むように加害するため、加害部分から折損し易くなる。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
本種はオンシツコナジラミなどを捕食する天敵であることも知られており、コナジラミが発生している間はもっぱら捕食に偏る傾向があるが、コナジラミの密度が下がると植物体からの吸汁に移行するようである。
-
天敵類を中心とする総合防除体系の施設栽培のトマトでは、防除圧が低く、多発することが考えられるので、十分注意する必要がある。
-
[具体的データ]
-

図1 タバコカスミカメのトマトでの被害ならびに加害状況

表1 タバコカスミカメのトマト茎上部における寄生と被害部位
-
[その他]
-
研究課題名:施設野菜病害虫の環境保全型総合管理技術の開発
予算区分 :助成事業(新技術地域実用化研究促進事業)
研究期間 :2001年度(1999〜2002年度)
目次へ戻る