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アブラムシ類の2種在来寄生蜂の生物特性とワタアブラムシに対する密度抑制効果


[要約]
2種の在来寄生蜂Aphelinus varipesとA.gossypiiのワタアブラムシを寄主とした場合の発育日数、総産卵数、生存日数等の生物パラメータを明らかにした。また、両種は秋期にキュウリのワタアブラムシに対して発生初期から株あたり1-2頭の雌成虫を1週間間隔で3〜4回放飼することにより、アブラムシ密度を無放飼区の1/5〜1/10に抑制できる。

[キーワード]
在来寄生蜂、Aphelinus varipes、Aphelinus gossypii、生物特性

[担当]
九州沖縄農研・野菜花き研究部・上席研究官

[連絡先]電話0942-43-8271	
[区分]九州沖縄農業・病害虫、野菜花き、野菜茶業・野菜生産環境、共通基盤・病害虫(虫害)	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
日本にはアブラムシ類の在来寄生蜂が何種類か報告されているが、天敵としての有効性に関する知見は少ない。一方、海外から生物製剤としてコレマンアブラバチが導入され、実際の利用も始まっているが、在来種と導入種の競争関係も不明であり、今後、在来種が導入種の効果に影響を及ぼす可能性も懸念される。そこで、西日本の野菜ほ場で普通に見られる2種の在来寄生蜂Aphelinus varipesとA.gossypiiについて生物特性や天敵としての有効性を評価するとともに導入種との関係解明のための基礎資料を得る。

[成果の内容・特徴]
  1. Aphelinus varipesはワタアブラムシに寄生性を有する。ワタアブラムシを寄主とした場合の摂氏25度における発育期間は13.5日、1雌当たり平均産卵数は153.8個、平均生存日数は11.8日である(表1)。

  2. A.gossypiiのワタアブラムシを寄主とした場合の摂氏25度における発育日数は14.4日、1雌当たり平均産卵数は346.0個、平均生存日数は17.7日である(表1)。

  3. 両種ともに成虫はワタアブラムシに対して寄主体液摂取を行い、摂氏25〜35度において1雌当たり15〜35個体のワタアブラムシを死亡させる(表1)。

  4. A.varipesは、A.gossypiiに比べて摂氏30、35度での産卵能力が高く、摂氏30度での幼虫期の死亡率が低く、高温条件での適応能力が高いことが示唆される(データ略)。

  5. A.gossypiiは、秋期にキュウリのワタアブラムシに対して発生初期から株あたり1-2頭の雌成虫を1週間間隔で3回放飼することにより、無放飼区の1/6の密度に抑制する(図1)。夏期(6〜8月)に放飼した場合の抑制能力は低い(データ省略)。

  6. A.varipesは、秋期にキュウリのワタアブラムシに対して発生初期から株あたり1-2頭の雌成虫を1週間間隔の3回の放飼とその後1回の追加放飼により、無放飼区の1/5〜1/10の密度に抑制する(図2)。夏期(6〜8月)の放飼では、無放飼区の1/3の密度に抑制する(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 野菜類のワタアブラムシの総合防除体系を構築する場合の参考となる。

  2. 導入寄生蜂のコレマンアブラバチを利用した条件での在来寄生蜂の影響や役割を明らかにする必要がある。

[具体的データ]

表1 ワタアブラムシを寄主とした場合のAphelinus varipesとAphelinus gossypiiの生物特性


図1 秋作キュウリにおけるA.gossypiiの放飼区と無放飼区におけるワタアブラムシの個体数変動と寄生蜂の寄生率の推移


図2 秋作キュウリにおけるA.varipesの放飼区と無放飼区におけるワタアブラムシの個体数変動と寄生蜂の寄生率の推移

[その他]
研究課題名:アブラムシ類の在来一次寄生蜂の天敵としての有効性の評価および二次寄生蜂の影響に関する研究
課題ID:07-05-04-02-02-02
予算区分 :特別研究員
研究期間 :2000〜2002年度


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