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スクミリンゴガイの親子判定に利用可能なアルビノ遺伝マーカー


[要約]
スクミリンゴガイの黄色型であるアルビノは褐色の野生型に対して劣性のメンデル遺伝に従う。アルビノ遺伝子をもつ個体は野生型と同等の生存率や繁殖力を有するため,アルビノを遺伝マーカーとした簡易な親子判定が可能である。

[キーワード]
スクミリンゴガイ、アルビノ、遺伝マーカー、親子判定、精子間競争

[担当]
九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫生態制御研究室

[連絡先]電話096-242-7732	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
スクミリンゴガイは世界的な水稲の加害種であり,国内では西南暖地における被害が特に大きい。この貝の個体群管理のために繁殖を操作する技術の開発が望まれているが,繁殖特性の解明に有効な遺伝マーカーが知られていない。野外においては,体色が黄色のアルビノ個体(図1)が褐色の野生型に混じって最大1%程度出現する。そこで,遺伝マーカーとして利用するため,アルビノの遺伝様式を決定し,アルビノ遺伝子をもつ個体の繁殖力や生存率を測定する。さらに,アルビノを遺伝マーカーとした親子判定法を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. アルビノは野生型に対して劣性のメンデル遺伝に従う(表1)。アルビノの雌雄を掛け合わせるとF1,F2世代とも子孫はすべてアルビノになるため(表1),アルビノ系統が確立できる。

  2. アルビノ遺伝子をもつ個体は野生型の個体と同等の繁殖力および生存率を示す(表2)。特にアルビノの雄は野生型の雄と同等の授精能力をもつ(データ省略)。

  3. 上記1より,アルビノの雌に野生型およびアルビノの雄を交配すると,孵化貝の体色から父親の判定が可能である。

  4. この親子判定法により,雌体内における精子置換の様相が調査可能である(図2)。アルビノと野生型の個体間で繁殖率や生存率に差がないので,アルビノと野生型の孵化貝の比率をそのまま精子置換率とみなすことができる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 遺伝マーカーとしての利用以外に,アルビノ個体では殻を通して精巣の有無が確認できる。このため,解剖せずに幼貝の雌雄が判別でき,効率的な雌雄の選抜が可能である。

  2. 精子置換の知見は遺伝的防除や不妊化技術の開発に利用できる。

  3. 野外においては,体色に働く自然選択のためにアルビノ個体と野生型個体の生存率が異なる可能性がある。

[具体的データ]

図1 スクミリンゴガイのアルビノ(左)と野生型個体(右)


表1 褐色(野生型)または黄色(アルビノ)の雄雌を交配した場合のF1およびF2の体色の分離


表2 親世代が生んだ卵塊の特性と卵塊当たり40個体の孵化貝(F1)を2ヶ月間飼育した際の生存率(平均±SD)に及ぼす影響*


図2 野生型およびアルビノの雄と順に交尾させた雌における精子置換例

[その他]
研究課題名:スクミリンゴガイの生活史特性の解明と被害回避
課題ID:07-08-04-02-03-02
予算区分 :交付金
研究期間 :2001〜2002年度


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