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弱毒ウイルスを利用したサツマイモ帯状粗皮病の防除技術


[要約]
圃場から分離・選抜したサツマイモ斑紋モザイクウイルス(SPFMV)の弱毒ウイルスの接種は、サツマイモ帯状粗皮病に防除効果があり、その効果は翌々年も持続される。

[キーワード]
カンショ、サツマイモ斑紋モザイクウイルス、サツマイモ帯状粗皮病、弱毒ウイルス

[担当]
大分農技セ・生物工学部、畑地利用部、九沖農研セ・地域基盤研究部・病害遺伝子制御研

[連絡先]0978-37-1141	
[区分]九州沖縄農業・植物バイテク、病害虫	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
サツマイモ帯状粗皮病の防除対策として、茎頂培養によるウイルスフリー苗を利用して被害軽減を図ってきた。しかし、病原ウイルス(サツマイモ斑紋モザイクウイルス強毒系統:SPFMV-S)はモモアカアブラムシによる虫媒伝染や塊根による伝染をするため、感染した株を種イモにすると2〜3年で大部分の株が発病するので、ウイルスフリー苗の更新(購入)が必要となり、生産者の負担となっている。そこで、本病に対し防除効果を有する弱毒ウイルスを選抜し、これを接種したカンショを種イモとして利用することで、中長期的な防除技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
  1. 大分県のカンショ栽培圃場から採取した塊根の帯状粗皮症状の軽微な株から分離した弱毒ウイルス10-Oは、発病が軽微で防除効果を有する(図1)。

  2. 10-Oを接種した株の塊根は、SPFMV-S接種株の塊根に見られるような帯状の粗皮症状やくびれ、激しい退色等の病徴は無もしくは軽微であり、塊根の顕著な品質低下は認められない(図2)。

  3. 10-Oを接種したカンショの収量(表1)や一般成分(水分、蛋白質、脂質、炭水化物、灰分、ビタミンC)含量(データ略)は、ウイルスフリー株と同程度である。

  4. 10-Oは、RFLP-RT-PCRによる系統識別法により、SPFMV-O(普通系統)と同様のバンドパターンを示し、SPFMV-Sと容易に識別できる(図3)。

  5. 10-Oのゲノムは、5'末端側約1KbpがSPFMV-Sと相同性が高く、他はSPFMV-Oと高い(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 10-Oを大分県産の優良形質の高系14号およびその突然変異系統である土佐紅に接種・増殖後、農家に配布し、種イモとして利用する。

  2. 弱毒ウイルスの効果を維持し品質・収量の安定確保を図るため、種イモの選抜は常時行う。

  3. 10-Oは、SPFMV-Sによる帯状粗皮病が発生するカンショ圃場で利用できる。

  4. ウイルス検出(RFLP-RT-PCR法)は、九州農業研究成果情報第13号431頁に準じる。

  5. 10-O及びこれを利用した防除技術は、平成14年度特許出願中(特願2003-15270)である。

[具体的データ]

図1 弱毒ウイルスの干渉効果(土佐紅)


表1 現地実証試験(土佐紅)


図2 弱毒ウイルス感染イモの外観(土佐紅)


図3 RFLP-RT-PCRによる10-Oの解析

[その他]
研究課題名:弱毒ウイルスを利用したサツマイモ帯状粗皮病の防除技術の確立
予算区分 :助成試験(バイテク実用化型)
研究期間 :1996〜2003年度


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