グルカナーゼとキチナーゼ遺伝子の同時発現による抗菌活性強化
- [要約]
- 細胞間隙分泌型に改変した溶菌酵素遺伝子のβ-1,3グルカナーゼとキチナーゼ遺伝子を連結したバイナリーベクターによって植物を形質転換することにより、細胞間隙における両遺伝子の発現が可能で、抗菌活性を高める。
- [キーワード]
- グルカナーゼ、キチナーゼ、バイナリーベクター、抗菌活性
- [担当]
- 福岡農総試・生産環境研・生物資源部・生物工学研究室
[連絡先]電話092-924-2970
[区分]九州沖縄農業・植物バイテク
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
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植物のキチナーゼは、傷害や病原菌の感染によって誘導され、糸状菌の胞子発芽や菌糸伸長を阻害することから、生体防御酵素であると考えられている。しかし、キチナーゼ遺伝子単独での導入では、抗菌スペクトルが狭いと考えられている。そこで、キチナーゼに加えてグルカナーゼ遺伝子を協調的に発現させることにより、抗菌スペクトルを広げて耐病性機能の強化を図る。
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[成果の内容・特徴]
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タバコのβ-1,3グルカナーゼ遺伝子を細胞間隙分泌型に改変し、ヤマイモキチナーゼ遺伝子との同時発現用バイナリーベクターを構築した(図1)。
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形質転換植物における細胞間隙分泌型ヤマイモキチナーゼおよびタバコグルカナーゼ遺伝子の発現は、Tissue Electro Blot Immuno-Assay(図2)やウエスタンブロット法により確認できる。
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両遺伝子が同時発現する形質転換タバコでは単独発現に比べて、細胞間隙抽出液での病原菌の菌糸伸長阻害活性が高い(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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遺伝子組換えによる複合病害抵抗性品種育成に活用できる。
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[具体的データ]
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図1 細胞間隙分泌型グルカナーゼとキチナーゼ遺伝子の導入による抗菌活性の強化

図2 Tissue Electro Blot Immuno-Assayによる細胞間隙分泌型ヤマイモキチナーゼの検出(左:装置の構成、右:検出像)

表1 形質転換タバコ細胞間隙抽出液における病原菌菌糸伸長
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[その他]
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研究課題名:導入遺伝子の機能強化技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :1997〜2001年度
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