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菓子パン向き硬質小麦品種「ニシノカオリ」の佐賀県における特性


[要約]
「ニシノカオリ」は「シロガネコムギ」に比べ出穂が3日、成熟が1日遅い。収量は劣り、千粒重は重く、粒質は硝子質の硬質小麦である。品質はやや劣るが、タンパク質含有率が高く、菓子パンの原料に適する。佐賀県で奨励品種に採用する。

[キーワード]
菓子パン、硬質コムギ、奨励品種

[担当]
佐賀県農試セ・バイオテクノロジー部・水稲育種研究室

[連絡先]電話0952-45-2141	
[区分]九州沖縄農業・水田作	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
佐賀県の小麦は麦作全体の4割を占め、めん用の「シロガネコムギ」と「チクゴイズミ」を作付している。しかしながら、消費者のニーズが多様化し、小規模パン業者による“こだわり”製品や、“より安心なもの”として、国産のパン用小麦の需要が増えており、一部ではこれまで輸入小麦で作ってきた学校給食のパンを、国産小麦に切り替える等の動きも出てきている。また、製粉業界からは国内産小麦の新たな需給拡大のためパン用小麦の作付が望まれている。そこで、消費者、実需者ニーズに応える品種として、タンパク質含有率が高く製パン適性のある品種を選定する。

[成果の内容・特徴]
「ニシノカオリ」は九州沖縄農業研究センターにおいて、「北見春42号」/「西海157号(後のアブクマワセ)」の交配から育成された硬質小麦で、「シロガネコムギ」と比較して以下の特性がある。

  1. 出穂期は3日、成熟期は1日遅い早生種である(表1)。

  2. 稈長は長く、穂長はやや短い。穂数は同程度である。耐倒伏性はやや劣る(表1)。

  3. うどんこ病、赤さび病に強いが、赤かび病には同程度かやや弱い(表1表4)。

  4. 千粒重は重く、容積重は同程度である。収量性は劣り、外観品質は同程度かやや劣る(表2表4)。

  5. タンパク質含有率が高く、ファリノグラムでの生地の形成時間、安定度が長く、バロリメーターバリューは大きい。エキステンソグラムでは吸水率、面積、伸長抵抗、伸長度が大きく、菓子パンの原料に適する(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 県下の平坦部から平坦上部(標高40m以下)に適する。

  2. 高蛋白特性を発揮させるため、実肥を施用する。

  3. 赤かびにやや弱いので、防除基準に従い適期防除を行う。

  4. 穂発芽性し易いので、適期に収穫する。

  5. 収穫期の穀粒水分が20%以下では、穂軸が折れやすくなり、コンバインでの収穫ロスが多くなるため、収穫適期水分20〜25%を厳守する。

[具体的データ]

表1 生育調査


表2 収量、品質調査


表3 生地特性


表4 現地試験成績

[その他]
研究課題名:麦類奨励品種決定調査
予算区分 :県単
研究期間 :1996〜2002年度


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