水稲奨励品種「越南176号」の特性
- [要約]
- 水稲「越南176号」は、「コシヒカリ」に比べて出穂期で約1日、成熟期で約4日遅い早生の晩である。短稈で耐倒伏性が強く、千粒重が重く、収量性が高い。食味はコシヒカリ並の良食味である。
- [キーワード]
- 奨励品種、早期水稲、良食味、粳種
- [担当]
- 鹿児島県農試・作物部
[連絡先]電話099-268-3231
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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鹿児島県の早期水稲は、粳種のほぼ100%を「コシヒカリ」が占めている。しかし、「コシヒカリ」は耐倒伏性が劣ることや、いもち病に弱い欠点がある。さらに、一品種集中による収穫作業や共同乾燥施設の競合、病害虫や気象災害による被害が集中するなどの問題が起きている。このため、「コシヒカリ」と作期分散ができ、食味が「コシヒカリ」と同等以上に良く、栽培特性が優れた品種に対する要望が行政、生産者から強く求められている。
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[成果の内容・特徴]
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「越南176号」(越南148号/北陸148号[どんとこい]:福井県農業試験場)は、「コシヒカリ」と比較して次の特性を有する。
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出穂期で1日、成熟期で4日遅い“早生の晩”である(表1)。
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稈の剛柔は“やや剛”で、稈長が約10cm短く耐倒伏性は強い(表1)。
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止め葉は立ち、草姿は良い。
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穂数は少なく、一穂籾数はやや多い(表1、表2)。
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玄米の千粒重が重く、収量性は高い(表2、図1)。
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玄米の外観品質は同程度かやや劣る(表2)。
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食味は、外観、粘りが優れ、総合評価は「コシヒカリ」並に優れる(表3)。また、玄米タンパク質含有率は「コシヒカリ」より明らかに低い(図2)。
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[成果の活用面・留意点]
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早期栽培地帯の作期分散を図る必要のある地域を対象に、「コシヒカリ」の一部に替えて約1、500haに普及予定である。
- いもち病真性抵抗性遺伝子“Pita-2”をもつことから、現状ではいもち病の発生は見られないが、侵害菌の動向に注意する。
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耐冷性が“やや弱”のため、極端な早植えを避け、4月植えをめやすとする。
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コシヒカリに比べて登熟期間がやや長いので早期落水は避け、登熟および品質の向上に努める。
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籾数が多くなりすぎると品質が低下することがあるので,多肥栽培は避ける。
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[具体的データ]
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表1 出穂及び成熟期調査

表2 収量及び品質調査

図1 「越南176号」「コシヒカリ」の玄米重の比較

図2 「越南176号」「コシヒカリ」の玄米タンパク質含有率の比較

表3 食味調査
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[その他]
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研究課題名:農作物品種選定試験
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2003年度