中生の多収、良質、良食味の水稲新品種候補系統「佐賀29号」
- [要約]
- 水稲「佐賀29号」は熟期が「ヒノヒカリ」より2日程度遅い“中生の中”である。短稈であるが穂長はやや長く、耐倒伏性に優れる。玄米の外観品質はやや良く、食味は「ヒノヒカリ」並に良く、「ヒノヒカリ」より10%以上多収である。
- [キーワード]
- イネ、多収、良食味、粒形、耐倒伏性
- [担当]
- 佐賀県農試セ・バイオテクノロジー部・水稲育種研究室
[連絡先]電話0952-45-2141
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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本県の水稲は、ほとんどの市町村で「ヒノヒカリ」が作付され、県全体の5割以上を占めている。これは「ヒノヒカリ」が良食味であり流通評価が高く、栽培しやすい等の特性を有していることに起因する。しかし、近年この基幹品種である「ヒノヒカリ」で高温時での登熟不良がみられ、乳白、心白粒の発生が品質を大きく低下させ、さらに良食味米生産のため励行されている少肥栽培により収量性が低下してきており、作付地域(県西部)によっては玄米の充実不足(ヤセ米)がみられる。そこで、中生で栽培特性が優れ、「ヒノヒカリ」並の食味性を有し、玄米品質の優れた品種を育成する。
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[成果の内容・特徴]
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「佐賀29号」は1992年、佐賀県農業試験研究センターにおいて、「佐賀5号」を母、「奥羽346号」を父として人工交配した組合せから育成された。「ヒノヒカリ」と比較した特性は以下のとおりである。
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出穂期、成熟期は2日遅く、“中生の中”である(表1)。
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稈長は15cm程度短く、穂長はやや長く、穂数は同程度の“中間型”である(表1)。
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耐倒伏性は優れ、“強”である(表1)。
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葉色がやや濃く、止葉の直立性は“やや立”で、籾は稀に極短芒を有する(表1)。
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いもち病真性抵抗性遺伝子型は“+”と推定され、葉いもちおよび穂いもち圃場抵抗性はどちらも“やや弱”である。白葉枯病圃場抵抗性は“やや強”で、穂発芽性は“やや難”である(表1)。
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玄米千粒重は1.5g重く、収量は10%以上多い(表1)。
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玄米の形状は長さは同等であるが、幅及び厚さが広く厚くて充実が良い(表2)。外観品質は腹白がやや多いが、心白、乳白の発生は少なく、やや良い(図1)。
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玄米のタンパク質含有率はやや低く、炊飯米は光沢、粘りが強く、味が良い。食味は同等である(表1、表3)。
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[成果の活用面・留意点]
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中生の多収、良食味品種として、山麓地〜平坦地に適する。
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いもち病に弱いので、常発地帯での栽培は避け、適期防除に留意する。
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[具体的データ]
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表1 特性一覧

表2 玄米形状と粒厚分布

表3 「佐賀29号」の食味評価(穀検依頼)

図1 腹白、心白、乳白の発生程度
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[その他]
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研究課題名:水稲品種の育成
予算区分 :県単
研究期間 :1993〜2002年度
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