暖地の小麦早播き栽培におけるヤエムグラの発生の特徴と防除
- [要約]
- 小麦早播き栽培では標準播き栽培に比べてヤエムグラの発生期間が長く、必要除草期間が長い。播種直後土壌処理除草剤の効果には年次変動が認められるが、広葉対象茎葉処理除草剤を2月中旬までに処理することで高い除草効果が得られる。
- [キーワード]
- コムギ、出芽、発生消長、ヤエムグラ、葉齢進展
- [担当]
- 九州沖縄農研・水田作研究部・雑草制御研究室
[連絡先]電話0942-52-0675
[区分]九州沖縄農業・水田作、共通基盤・雑草
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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ヤエムグラはアカネ科の越年生雑草で、九州の麦圃の主要雑草の一つである。ヤエムグラは麦にからみつきながら成長し、倒伏や収穫作業の支障の原因となる。また、種子が収穫物に混入して品質を低下させることから、高品質安定栽培にはその防除が欠かせない。稲麦二毛作体系の生産安定化のために検討されている秋播き型早生小麦を用いた早播き栽培は雑草の発生消長に変化をもたらすと考えられる。そこで小麦早播き栽培におけるヤエムグラの発生の特徴を明らかにし、効率的防除法を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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11月上旬を播種期とする小麦早播き栽培におけるヤエムグラの発生消長は、11月下旬を播種期とする標準播き栽培のそれに比べて、年次による差が大きいが、2月中旬には年次にかかわらず累積出芽率が95%以上となる(図1)。
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いずれの年次においても、出芽始期(累積出芽率10%)から出芽終期(累積出芽率90%)までの日数は早播き栽培で長く、標準播きに比べて防除を必要とする期間が長い(表1)。
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ヤエムグラの葉齢は出芽時期にかかわらず、1葉期以降は日平均気温の積算値が約摂氏100度で1葉進展し(図2)、小麦播種後に発生したヤエムグラの2月中旬における最大葉齢は4〜5葉である。
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早播き栽培における播種直後の土壌処理除草剤のヤエムグラに対する除草効果は年次間でばらつきが認められる(表2)。また、ヤエムグラに卓効を示す広葉対象茎葉処理除草剤のピラフルフェンエチルは、2月中旬までに処理することで高い除草効果が得られ、播種直後の土壌処理除草剤で十分な除草効果が得られなかった場合は、ピラフルフェンエチルを体系処理することでヤエムグラを防除できる(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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暖地の小麦早播き栽培におけるヤエムグラの効率的防除法確立のための基礎的知見として活用できる。
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福岡県筑後市内水田産のヤエムグラを用いて、九州沖縄農研センター内のヤエムグラ優占圃場で行った試験の結果である。
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[具体的データ]
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図1 小麦早播き栽培と標準播き栽培のヤエムグラの発生消長(圃場試験)

表1 累積出芽率が10%、50%および90%に達した播種後日数

図2 出芽時期の異なるヤエムグラの葉齢進展

表2 小麦早播き栽培におけるヤエムグラの除草剤による防除
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[その他]
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研究課題名:暖地の麦作における難防除雑草制御技術の開発
課題ID:07-02-03-01-06-02
予算区分 :21世紀プロ1系
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