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飼料イネ移植栽培におけるヒメタイヌビエの生育とイネへの雑草害


[要約]
飼料イネ移植栽培で発生したヒメタイヌビエの草丈の分布は、「Te-tep」および「Taporuri」では常にイネの草冠内にある。これらの品種では群落内の光量子密度が速く低下し、ヒメタイヌビエの乾物重は「ヒノヒカリ」と競合した場合より抑制され,かつイネの乾物重の減少程度は小さい。

[キーワード]
飼料イネ、ヒメタイヌビエ、移植栽培、2回刈り栽培、光量子密度

[担当]
九州沖縄農研・水田作研究部・雑草制御研究室

[連絡先]電話0942-52-0675	
[区分]九州沖縄農業・水田作、共通基盤・雑草	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
省力・低コスト化の必要な飼料イネ栽培では、除草剤を極力使用しない雑草制御技術の確立が望まれている。飼料イネ栽培では、食用イネ品種と異なり、茎葉収量の高い品種が用いられており,これら品種は、雑草に対する抑制力が大きいことが推察される。また、暖地では、他の飼料作物と同様に2回刈り栽培も行われている。そこで北部九州のイネ1回刈りおよび2回刈り移植栽培において多発生するヒメタイヌビエの生育に及ぼすイネ品種・系統の影響とイネへの雑草害を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. イネと同密度で混植したヒメタイヌビエのイネ出穂期頃の草丈は、イネ品種との競合・無競合による変化はなく,「Te-tep」および「Taporuri」より低く、「モーれつ」および「西海204号」とはほぼ同程度、食用品種の「ヒノヒカリ」よりも高い(図1)。

  2. イネ群落の相対光量子密度(群落外の光量子密度に対するイネ群落内の光量子密度の割合)は、「ヒノヒカリ」に比べて「Te-tep」などで迅速に低下し、20%以下に低下するまでにかかる日数は、「Te-tep」が「ヒノヒカリ」よりも5〜20日早い(表1)。2回刈り栽培における1番草刈取り後の低下も同様である(データ省略)。

  3. 1回刈りおよび2回刈り移植栽培におけるヒメタイヌビエの乾物重は、「Te-tep」おに比べて6月移植で小さい。また、2回刈り栽培での乾物重はイネの倒伏による影響がある「Te-tep」および「Taporuri」区を除いて、1回刈り栽培での乾物重より小さくなる(図2)。

  4. ヒメタイヌビエとの競合によるイネ乾物重の減少程度は、「Te-tep」および「Taporuri」では他の品種に比べて小さい。また、移植時期によって大きく異なり、5月移植に比べて6月移植で小さい(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、暖地飼料イネ移植栽培における除草剤低投入型雑草制御技術の開発ための知見となる。

  2. 本研究ではヒメタイヌビエの生育に及ぼすイネ品種・系統の影響を明らかにするため、イネ稚苗を栽植密度22.2株/m2で移植、ヒメタイヌビエはイネ移植日に育苗箱に播種して屋外で2〜3葉期まで育成した苗をイネの畦間中央に栽植密度22.2株/m2でイネ移植約2週間後に植え付けた。施肥条件(窒素施用量:kg/10a、速効性)は、基肥:6、追肥:3、穂肥:3、追肥(2回刈り栽培のみ1番草刈取り直後):5である。2回刈り栽培における1番草の刈取りは、5月移植では7月31日、6月移植では8月20日に行った。
  3. 「Taporuri」は,農業生物資源ジーンバンク整理番号5784の台湾の在来糯品種である。

[具体的データ]

図1 競合条件下でのイネ出穂期頃のイネとヒメタイヌビエの草丈


図2 飼料イネ栽培におけるヒメタイヌビエの生育(2002年)


表1 群落内の相対光量子密度が20%以下に低下する移植後日数


表2 飼料イネ移植栽培におけるイネ乾物重の品種間差(2002年)

[その他]
研究課題名:暖地飼料イネ栽培における除草剤を使用しない雑草管理技術の開発、暖地飼料用イネ栽培における除草剤低投入型雑草制御技術の開発
課題ID:07-02-02-*-22-03、07-02-02-*-03-02
予算区分 :ブラニチ3系、交付金


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