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春作ジャガイモのマルチ栽培における生分解性フィルムの利用


[要約]
脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性フィルムは、春作ジャガイモのマルチ栽培でポリフィルムと出芽期、地温および収量の差がない。また、フィルムを展張したまま機械収穫ができ、そのまま鋤込める。10a当たり生産費は、ポリフィルム利用に比べ高いがフィルムの剥ぎ取り作業の省力化と処理コスト削減が図られる。

[キーワード]
ジャガイモ、マルチ栽培、生分解性フィルム、脂肪族ポリエステル

[担当]
長崎県総合農林試験場・作物部・栽培技術科、企画経営部・経営科、機械施設科

[連絡先]電話0957-26-3330	
[区分]九州沖縄農業・畑作	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
長崎県におけるジャガイモの主要作型である春作マルチ栽培で使用されるポリフィルムは、収穫時の剥ぎ取りや処分が農家の負担となっている。また、廃棄後の処理が環境に及ぼす影響も問題となっており、使用後そのまますき込むことができる生分解性フィルムへの関心が高まっている。そこで、春作において栽培期間を3ヶ月程度要するジャガイモ栽培に適した生分解性フィルムを選定するとともに経営評価を行う。

[成果の内容・特徴]
  1. 脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性フィルムは、いずれもマルチャによる展張作業が可能である。

  2. 生分解性フィルムを用いた場合のジャガイモの出芽期は、いずれの資材も無マルチに比べて早く、透明ポリエチレンフィルムと同じである(表1)。

  3. 栽培期間中の地温は、いずれの資材も無マルチより高く、ポリフィルムと同程度で推移する(図1)。

  4. ジャガイモの収量は、いずれの資材も無マルチより高く、ポリフィルムとは差がない(図2)。

  5. 収穫時における生分解性フィルムの畦表面部の崩壊程度はいずれも小さい(表2)。

  6. いずれの資材も展張したままで収穫機による掘りあげおよびロータリによる鋤込みができる。

  7. 鋤込み後120日程度で、ほとんど崩壊する(表2)。

  8. 生分解性フィルムを利用した場合、10a当たり生産費はポリフィルム利用に比べ16,213円高くなる。しかし、マルチの剥ぎ取り時間の解消と、その自家労働費、廃プラスチック処理費用のコスト削減が図られる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 出芽時の芽出し作業で裂ける場合があるので丁寧に行う。

  2. 収穫時、生分解性フィルムが収穫機の掘り取り口両側にたまる場合がある。

  3. 生分解性フィルムの飛散を防止するため、収穫後早めに鋤込む。

[具体的データ]

表1 供試フィルムおよび出芽期


図1 地温1)の推移(2002年)


図2 フィルムの種類と上いも重(4カ年平均)


表2 生分解性フィルムの崩壊程度


表3 春作ジャガイモにおける生分解性マルチ資材利用技術のチェックリスト

[その他]
研究課題名:九州・沖縄における地域特産畑作物産地活性化のための新しい持続的輪間作体系化技術の開発
予算区分 :助成試験(新技術実用化)
研究期間 :2000〜2003年度


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