ダイズのハスモンヨトウ抵抗性の選抜に有効なDNAマーカー
- [要約]
- ハスモンヨトウ抵抗性ダイズ品種「ヒメシラズ」の抵抗性に関連するQTL(量的形質遺伝子座)を連鎖群M上の2箇所に検出した。この遺伝子座近傍のSSR(単純反復配列)マーカーを用いることでハスモンヨトウ抵抗性品種を効率的に育成することが可能である。
- [キーワード]
- ダイズ、ハスモンヨトウ抵抗性、マーカー選抜、DNAマーカー、SSR
- [担当]
- 九州沖縄農研・作物機能開発部・大豆育種研究室
[連絡先]電話096-242-7740
[区分]九州沖縄農業・畑作
[分類]科学・参考
-
[背景・ねらい]
-
温暖地における大豆作ではハスモンヨトウによる加害が大きな問題になっている。抵抗性品種の作出は総合的害虫防除の観点から重要であり、ハスモンヨトウに対して抵抗性を持つ「ヒメシラズ」などの遺伝資源を用いて抵抗性品種の育種が行われているが、その農業形質の劣悪さから効率的な育種は難しい状況にある。そこで、抵抗性の主要因と考えられるハスモンヨトウ幼虫の生長を抑制する効果(抗生性)に関してSSRマーカーを用いてQTL解析を行い、抗生性に関する遺伝子座と連鎖するSSRマーカーを探索する。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
複合区間マッピング法によって、「ヒメシラズ」が持つハスモンヨトウに対する抗生性のQTLは連鎖群M上の2箇所に検出される(図1)。
-
1つはSSRマーカー、Satt220とSatt175の間に位置し、もう1つはSatt567とSatt463の間に位置している。両QTLの位置と効果は表1に示す。
-
両QTL近傍に位置するSSRマーカーの遺伝子型と抗生性の関係からも、両QTLが抗生性のかなりの部分を司ることが明らかである(図2)。
-
QTL解析には「フクユタカ」×「ヒメシラズ」に由来するF2、143個体を用いている。抗生性の評価は脱皮直後のハスモンヨトウ6齢幼虫を各F2個体の葉で飼育して、蛹化までの期間と蛹重を測定して行っている。各F2個体あたり反復は6頭とし、幼虫の雌雄の差による誤差を補正するため、(蛹重/蛹化迄時間)を算出して抗生性の指標としている。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
QTL近傍のSSRマーカーを利用して効率的なハスモンヨトウ抵抗性の育種選抜を行うことが可能である。
-
SSRマーカーの使用にあたっては、まず「ヒメシラズ」と育種母本の間に多型があることを確認しておく必要がある。
-
「ヒメシラズ」の農業形質は劣悪なので、単交配ではなく優良系統の戻し交配による育種が有効である。
-
SSRマーカーの開発はCreganらによるものであり、マーカープライマーの塩基配列の情報はSoyBase(http://129.186.26.94/ssr.html)からの入手が可能である。
-
[具体的データ]
-

図1 複合区間マッピング法によって連鎖群Mに検出された抗生性のQTL

表1 抵抗性QTLの位置と座乗する遺伝子の効果

図2 連鎖群M上の2遺伝子に連鎖するマーカーの遺伝子型と抗生性の関係
-
[その他]
-
研究課題名:ダイズのハスモンヨトウ抵抗性に関するDNAマーカーの開発
課題ID:07-02-05-01-14-03
予算区分 :DNAマーカー
研究期間 :2002〜2003年度
目次へ戻る