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サトウキビ酢によるがん細胞の試験管内におけるアポトーシス誘導効果


[要約]
サトウキビ酢はヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60)にアポトーシスを誘導して、がん細胞の増殖を抑制する。吸着クロマトグラフィで100%メタノール溶出画分が強い活性を示す。

[キーワード]
サトウキビ、酢、ヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60)、アポトーシス誘導、抗がん作用

[担当]
九州沖縄農研・畑作研究部・畑作物変換利用研究室

[連絡先]電話0986-22-1506	
[区分]九州沖縄農業・畑作、流通加工	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
沖縄・南西諸島の基幹作物であるサトウキビは、収益性が停滞し、作付け面積も年々減少している。それゆえ、サトウキビの新需要促進は、地域経済の活性化の観点からも危急の問題である。サトウキビ酢の機能性の一つとして、がん細胞の増殖抑制効果とそのメカニズムについて明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. サトウキビ酢の機能性成分は吸着クロマトグラフィー(アンバーライトXAD2000,5x50cm)により簡易・大量に分画できる(図1)。

  2. サトウキビ酢の吸着カラム100%メタノール溶出画分は、10%FBSを含むRPMI1640培地と共にがん細胞(ヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60))に添加して一定時間処理すると、100%画分と全吸着画分はHL-60の増殖を抑制する(図2,図3)。

  3. 100%メタノール溶出画分により誘導されるHL-60の細胞死がアポトーシスであることは、核の断片化とDAPI染色で観察される核の小粒化により明らかである(図4)。サトウキビ酢の成分ががん細胞にアポトーシスを誘導することは、これらの成分にがん細胞を死滅させる作用(抗腫瘍性)が有ることを意味する。

[成果の活用面・留意点]
  1. がん細胞に対するサトウキビ酢のアポトーシス誘導に関する基礎資料として活用できる。

  2. サトウキビ酢の今後さらなる細胞レベルや動物レベルで行う場合、目的物質を容易・大量に精製することが出来るため、機能性探索に有効利用が期待できる。

  3. サトウキビ酢の100%メタノール溶出画分だけでなく、全吸着画分(0〜100%メタノール溶出画分)にもがん細胞増殖抑制作用が認められてため、食品として摂取することで効果が期待できる。但し、今後動物実験および、ヒトを対照にした摂取効果についての調査が必要となる。

[具体的データ]

図1 サトウキビ酢の簡易精製法


図2 サトウキビ酢の各メタノール画分によるHL-60の細胞生育阻害状況


図3 サトウキビ酢の0~100%画分によるHL-60の細胞生育阻害状況


図4 サトウキビ酢100%メタノール溶出画分処理後のHL-60におけるDNA断片化(A)とDNAの小粒化のDAPI染色による観察(B)

[その他]
課題ID:07-03-04-01-19-03
研究課題:サトウキビ加工品のインビボでの機能性解明
予算区分 :21世紀プロ
研究期間 :2003年度(2002〜2005年度)


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