乳成分率向上のための給与飼料中の粗脂肪含量と粗飼料のTDN含量
- [要約]
- 泌乳牛の乳蛋白質率及び無脂固形分率を高めるためには、給与飼料中の粗脂肪含量は3.7%以下、粗飼料中のTDN含量は55%以上とすることが望ましい。
- [キーワード]
- 泌乳牛、乳蛋白質、無脂固形分、粗脂肪、粗飼料、TDN
- [担当]
- 福岡農総試・家畜部・乳牛チーム
[連絡先]電話092-925-5232
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(乳牛)
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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酪農経営の安定化を図るためには、高品質生乳の生産に関する飼養技術を体系化する必要がある。そこで、県内の主要酪農地域(飯塚地域、久留米地域、甘木・朝倉地域、南筑後地域)における酪農経営の給与飼料やその養分組成、給与方法等の飼養条件と乳生産に関する実態を調査分析し、乳成分率向上のための飼料成分とその指標値を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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冬季調査の泌乳中期牛(分娩後110〜219日)において、乳蛋白質率および無脂固形分率に対して影響の大きい飼料成分項目は、CP給与量、粗脂肪含量および粗飼料中のTDN含量である。
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乳成分率が平均値(乳蛋白質率3.3%、無脂固形分率8.9%)以上である個体は、給与飼料成分がCP給与量3.51kg以下、粗脂肪含量3.7%以下、粗飼料中のTDN含量55.6%以上の条件により分類できる(表1)。
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CP給与量は、乳量との関係が大きいことから(寄与率=0.73)、表1の連立方程式の解:CP給与量3.51kgを要求量(日本飼養標準1999のCP充足率100%)と見なして、経産牛の乳量(乳脂肪率4%)に換算すると37kg程度となる。これ以上の乳量においては、乳蛋白質率3.3%以上、無脂固形分率8.9%以上である個体は少なくなる。
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乳蛋白質率及び無脂固形分率が平均値以上となる飼料条件から、乳量との関係が大きいCP給与量を除いて、粗脂肪含量と粗飼料中のTDN含量の条件領域を概念図で示すと、図1のABC'D'の範囲となる(C'D'は仮の領域指定)。
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[成果の活用面・留意点]
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高品質生乳生産のための飼養管理に活用できる。
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この分析に当たっては乳量が安定し、給与飼料に対する乳量・乳成分の変化が明瞭であった冬季調査の泌乳中期牛のデータを用いたが、分析結果は他の乳期でも利用可能である。
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給与飼料中の粗脂肪含量は3.0%以下になると乳量が低下し、粗飼料中のTDN含量は54〜56%で乳量が多くなる傾向であった。
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[具体的データ]
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表1 乳量・乳成分率が平均値以上の場合の判別関数式

図1 乳成分率が平均値以上である場合の飼料成分領域(ABC'D')
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[その他]
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研究課題名:地域飼料特性を考慮した高品質生乳の安定生産技術
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :2000〜2002年度
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