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黒毛和種子牛への粉末初乳給与効果


[要約]
黒毛和種子牛を分娩後直ちに母子を分離し、初乳を粉末初乳のみ給与することにより、子牛の血清中IgG濃度を必要量維持し、その後の発育にも影響を与えない。また、粉末初乳を分娩後1回補助的に給与することにより、子牛血清中IgG濃度を高い値で補強することができる。

[キーワード]
肉用牛、粉末初乳、IgG濃度

[担当]
宮崎畜試・飼養部・肉用牛科

[連絡先]電話0984-42-1122	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(肉用牛)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
近年、超早期母子分離方式を活用した大規模肉用牛繁殖農家が増加しており、そのなかで初乳に対する関心が高まってきている。これまでは、乳牛の凍結初乳で対応してきたが、近年、粉末初乳が市販され注目されている。そのため、1〜2日齢で母子分離を行う人工哺乳での粉末初乳の効果を確認するとともに適正な給与方法を検討する。

[成果の内容・特徴]
黒毛和種子牛に母牛の初乳を自由に哺乳する母牛初乳区(雄5頭、雌3頭)、分娩後直ちに母子を分離し粉末初乳を2回給与する粉末初乳区(雄3頭、雌2頭)、分娩後直ちに粉末初乳を1回給与しその後母牛の初乳を自由に哺乳する初乳併用区(雄4頭)を設けた。粉末初乳は、市販牛粉末初乳(IgG60g含有)を強制給与し、母牛初乳区、初乳併用区については分娩後2日で母子を分離し、その後は粉末初乳区と同様に代用乳300gをお湯1.7lに溶かし1日2回6週齢まで給与した。

  1. 母牛初乳区等で初乳摂取平均時間は、183分と非常に遅い。また、初乳併用区で分娩後24時間の授乳時間、授乳回数は有意に少なくなる(表1)。

  2. 分娩1日後の子牛血清中IgG濃度は、母牛初乳区で最も高くなるが標準偏差が大きい傾向となる。粉末初乳区のIgG濃度は低くなるが、必要量といわれる10mg/mlを確保し、標準偏差も小さい傾向となる。初乳併用区は、哺乳行動は少くなるが、IgG濃度は高く、標準偏差の小さい傾向となる(図1)。

  3. 体重体高の推移は、図2に示すとおり各区に有意な差は見られない。

  4. 4週齢までの下痢の発生状況は、初乳併用区で発生回数が多い傾向にあるものの、粉末初乳区、初乳併用区とも下痢の発生率、持続日数、発生日齢、スコアとも良好な傾向となる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 母牛からの初乳が摂取できない場合の0日母子分離における免疫の供給に活用できる。

  2. 母牛から初乳を摂取させる超早期母子分離等における免疫の補強に活用できる。

[具体的データ]

表1 分娩後24時間の哺乳行動


図1 子牛血清中IgG濃度の推移


図2 体重・体高の推移(雄)


表2 4週齢までの下痢発生状況

[その他]
研究課題名:21世紀を担う肉用繁殖牛の飼養管理確立試験
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2003年度


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