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パン屑とトウフ粕を活用した豚からの環境負荷物質同時低減飼料


[要約]
飼料中の粗蛋白質およびリン含量を下げアミノ酸とフィターゼを添加するとともに、銅と亜鉛の添加量を自主規制上限値から要求量に近づけた、パン屑とトウフ粕主原料飼料を肥育前期豚に給与することにより、産肉性や肉質に影響を与えることなく、豚からの窒素、リン、銅、亜鉛および尿排泄量を同時に低減できる。

[キーワード]
パン屑、トウフ粕、窒素、リン、銅、亜鉛、豚

[担当]
熊本県農業研究センター・畜産研究所・中小家畜研究室

[連絡先]電話096-248-6433	
[区分]九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
わが国における家畜糞尿の排泄量はすでに農地の受容能力の限界に達しているとされ、排泄量やその中に含まれる環境負荷物質そのものを低減させるための新しい技術の開発が望まれている。そこで、食品工場残さであるパン屑とトウフ粕を主原料に、肥育豚の生産性や枝肉の品質を損なうことなく、良質な豚肉生産を可能とする、豚からの環境負荷物質排泄量低減のための低コスト飼料を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 肥育前期豚(30〜70kg)においても、窒素、リン、銅、亜鉛排泄量を削減するためには、これらの過剰な給与を避ける飼料配合設計が有効である。

  2. 通常の飼料組成である対照飼料(粗蛋白質(CP)含量18.0%、非フィチンリンおよびリジン含量が要求量の112%、105%、無機態の銅および亜鉛を自主規制上限量(銅45、亜鉛55mg/kg)添加)に対して、環境負荷物質の排泄量を低減させる肥育前期豚用飼料(低減飼料)は、CPを下げ(CP15%)、無機リン無添加、不足する4種のアミノ酸とフィターゼ500単位/kgを添加し、無機態の銅および亜鉛は4.4および35.8mg/kgの添加量とすることで配合できる(表1)。

  3. パン屑とトウフ粕を利用した環境負荷物質低減飼料(低減飼料)を肥育豚に給与することによって、対照飼料に対し、窒素の排泄量を29%(P&st;0.05)、リンの排泄量を33%(P<0.01)、亜鉛の排泄量を53%、銅の排泄量を94%(P<0.01)および尿排泄量を30%(P<0.01)同時に低減できる(図1)。

  4. パン屑とトウフ粕を利用した低減飼料を給与した肥育豚の、発育、飼料の利用性、背脂肪厚は、対照飼料を給与した肥育豚のそれらと差はない。

[成果の活用面・留意点]
  1. トウモロコシや食品残さを利用した自家配合飼料農家において、豚からの環境負荷物質排泄量の低減のための低コスト飼料の製造に利用できる。

  2. 銅、亜鉛添加量の削減には、農場における下痢等の発生状況に留意すること。

[具体的データ]

表1 対照飼料と環境負荷物質低減飼料の配合割合および成分値


図1 肥育前期豚からの環境排泄物同時低減飼料の効果


表2 環境負荷物質同時低減飼料が豚の生産性と枝肉の品質に与える影響

[その他]
研究課題名:環境負荷物質排泄量低減を考慮した低コスト良質豚肉生産技術の開発
予算区分 :助成試験(地域新技術型)
研究期間 :2001〜2003年度


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