周産期乳用牛の陰イオン塩添加によるカルシウム代謝改善
- [要約]
- 乳用牛分娩前後の周産期疾患の予防を目的として陰イオン塩を飼料に添加することにより、尿pHが6.0〜6.5に低下しカルシウムの消化率が高まる。また血液成分から腎機能障害は疑われず、大幅な飼料摂取量の低下も認められない。
- [キーワード]
- 家畜、乳用牛、陰イオン塩、DCAD値、カルシウム代謝
- [担当]
- 宮崎畜試・飼養部・酪農科
[連絡先]電話0984-42-1122
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(乳牛)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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乳用牛(ホルスタイン種)の分娩時に特に問題とされる疾患は飼料摂取量の減少に伴う負の栄養バランスがもたらす疾患とカルシウム代謝の不活性化によって起こる疾患がある。これらのバランスが崩れることによるさまざまな周産期疾患は泌乳・繁殖成績に大きな影響を及ぼす。乳用牛の分娩前後の低カルシウム血症(以下低Ca血症)によって引き起こされる乳熱等の周産期疾患防止として、分娩前における陰イオン塩を用いた飼料中のイオンバランス(DCAD)コントロールについて検討する。
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[成果の内容・特徴]
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- 陰イオン塩としてCaCl2、MgSO4を添加する際は尿pH値が推奨値の6.0〜6.5となり、DCAD値が-150mEq/Kgであった(図1)。
DCAD値(mEq/kgDM)={(Na%DM×435)+(K%DM×256)}-{(Cl%DM×282)+(S%DM×624)}
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DCAD値を低下させるとカルシウムの消化率が高い値を示すことから、腸管からのカルシウム吸収が促進される(表1)。
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グルタミン酸発酵副産物が主成分の陰イオン塩(DCAD値-2960mEq/Kg)を給与しても、血中無機P及びMg濃度のいずれも正常値の範囲内であり、腎機能障害にはつながらないものと推察される(図2)。また飼料残餌率では給与形態にかかわらず試験区が対照区よりやや高い傾向にあったが、大幅な飼料摂取量の低下は認められない(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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分娩前飼料のDCAD値を低下させると低Ca血症の予防技術として利用可能である。
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陰イオン塩を分娩牛に添加する場合、その効果に個体差が大きいので尿pHで添加量が適当であるかどうか随時確認が必要である。
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[具体的データ]
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図1 陰イオン塩添加後の尿pHの推移(給与3時間後採尿)

表1 カルシウム代謝

図2 血液成分の経時的変化

表2 飼料残餌率(%)
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[その他]
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研究課題名:ホルスタイン分娩牛の乳熱防止のための陰イオン添加物の利用
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2002年度
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