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妊娠末期乳牛のカルシウム代謝に及ぼす産次の影響


[要約]
乳牛の妊娠末期における骨代謝活動の様相が産次間で異なり産次とともに低カルシウム血症発症の危険性が高まる傾向にある。特に3産以上についてミネラルバランスを考慮した飼料給与,陰イオン添加量の調整やカルシウムの添加を行う等カルシウム代謝を高める妊娠末期の飼養管理が必要である。

[キーワード]
乳牛、妊娠末期、カルシウム、高カリウム、陰イオン添加剤

[担当]
鹿児島県畜試・乳用牛部

[連絡先]電話0995-48-2187	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(乳牛)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
ふん尿等の過剰な土地還元・施用に伴う給与飼料からの過剰なカリウム(K)の摂取は乳牛の周産期における代謝病の増加の原因の一つとなっている。そこで、各種代謝病の発生を抑制しつつ効率的な乳生産を確立するため、カリウムの過剰摂取に伴う対策としてのカチオンアニオンバランス(DCAD)の効果と分娩直後のカルシウム代謝に及ぼす産次の影響について併せて検討し、分娩前のバランスのとれたミネラル給与方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 高K飼料摂取乳牛への塩化マグネシウム(MgCl2)添加により尿pHは、低下傾向を示した。尿pHの推移に産次間の差は認められない(図1)。

  2. 血中カルシウム(Ca)濃度は分娩直後から24時間後間で最も低下する。また,3産次以上においては分娩直後から24時間後間に血中Ca濃度の低下傾向がみられる(図2)。

  3. 血中副甲状腺ホルモン(PTH)濃度は分娩直前から上昇する傾向がみられ、3産次以降においては血中Ca濃度を保つため、高い濃度上昇がみられる(図3)。

  4. 血中骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)濃度は高産次において分娩後の骨形成に高い濃度が必要であったと推察される(図4)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 3産以上については、特にミネラルバランスを考慮した飼料給与、陰イオン添加量の調整やカルシウムの添加を行う等カルシウム代謝を高める妊娠末期の飼養管理を行う必要がある。

  2. 比較的容易に測定でき、産次間の影響も少ない尿pHはミネラル代謝改善に必要なDCAD値レベルの判定に有用である。

[具体的データ]

表1 給与飼料のミネラル濃度


図1 尿pHの推移


図2 血中Caの推移


図3 血中PTHの推移


図4 血中骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)の推移

[その他]
研究課題名:資源循環システムによる高品質牛乳生産の確立
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :2000〜2004年度


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