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活性汚泥曝気方式による堆肥舎臭気の脱臭技術


[要約]
堆肥舎から発生する臭気を吸引して活性汚泥液に送風・曝気することで臭気中のアンモニアおよびメチルメルカプタンの高効率除去が可能である。また、脱臭に使用した活性汚泥液は水分50〜55%の豚ふん堆肥1m3当たり2m3の活性汚泥液があれば100日間は利用可能である。
[キーワード]
活性汚泥曝気、アンモニア、メチルメルカプタン、硝化

[担当]
佐賀県畜産試験場・中小家畜部・養豚環境研究室

[連絡先]電話0954-45-2030	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(中小家畜・畜産環境)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
家畜ふんの堆肥化時にはアンモニアを中心とする高濃度の臭気が発生することから、堆肥化施設には脱臭施設を設置するなどの何らかの対策が必要となる。活性汚泥曝気方式による脱臭法は臭気成分と微生物との接触効率が高く、さまざまな臭気を効率よく処理できる一方,設備費が大きく低減できるメリットがあるが、堆肥化施設での実証規模における事例はない。そこで、通気型豚ふん堆肥舎での実証規模試験を行い、活性汚泥曝気方式による堆肥舎臭気の脱臭の検討を行った。

[成果の内容・特徴]
  1. 豚ふん発酵時の臭気を吸引して曝気水深2mで活性汚泥液に送風・曝気することによりアンモニアは97%以上、メチルメルカプタンは75%以上の除去が可能である(図1表1)。

  2. 硫化メチルは30〜60%、二硫化メチルは40〜80%の除去が可能であるが、除去率の変動が大きい(表1)。

  3. 脱臭に使用した活性汚泥液にはNH4-NおよびNOX-Nが蓄積するがNH4-N1,000mg/L以下、NOX-N1,000mg/L以下の範囲ならばアンモニアの除去能力および硝化作用は持続する(図2)。

  4. 活性汚泥液のpHはほぼ6.0〜6.5の間で安定する。本試験の結果より、水分50〜55%の豚ふん堆肥1m3当たり2m3の活性汚泥液があれば100日程度は活性汚泥液の交換なしで運転可能である(図3)。

  5. 活性汚泥液のBODとMLSSは変動を繰り返しながら減少する(図3)

  6. 設置コストは母豚80頭規模の通気型堆肥舎の一次発酵時の臭気を脱臭する場合で、活性汚泥液槽に既存施設を利用すると200万円程度で、その内訳はリングブロワーと配管に170万円程度、カーテン工事25万円程度、その他5万円程度である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 活性汚泥液はNH4-NとNOX-Nがそれぞれ1000mg/Lを超えた時点で交換することが望ましい。交換後の活性汚泥液は無機態窒素を0.2%程度含んだ液肥として利用可能である。
  2. 堆肥舎と汚水処理施設が隣接している場合には、汚水処理槽に臭気を曝気することにより、設置コストの低減および活性汚泥液の交換労力の削減が可能である。

  3. 堆肥舎臭気を吸引するブロワーは活性汚泥液を曝気しながら必要換気量を確保できる出力を持つ機種を選定する。換気量は堆肥の通気量の3〜4倍以上ある方が望ましい。

  4. 熱によるパイプの変形を防ぐため、ブロワー本体の排気口から2〜3m程度は塩ビパイプではなく鉄管を使用する必要がある。

[具体的データ]

図1 活性汚泥曝気方式脱臭施設の概要図


表1 アンモニアと硫黄化合物の臭気測定結果


図2 活性汚泥液の窒素成分とアンモニア除去率の推移


図3 活性汚泥液のpH、BOD、MLSSの推移

[その他]
研究課題名:家畜排せつ物有効利用新技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2002〜2003年度


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