栄養膜小胞との共培養およびビタミンB群添加による少数牛体外受精胚の胚発生率向上
- [要約]
- 牛体外受精胚を少数培養する場合、TCM199にビタミンB群を添加した培養液を用いて栄養膜小胞と共培養することにより、胚の発生率、良質胚率が向上する。
- [キーワード]
- 牛体外受精胚、少数培養、栄養膜小胞、共培養、ビタミンB群
- [担当]
- 福岡農総試・家畜部・畜産工学チーム
[連絡先]電話092-925-5232
[区分]九州沖縄農業・動物バイテク
[分類]技術・参考
-
[背景・ねらい]
-
体外受精胚の培養では、培養できる数が少ないほど胚の発生率が低くなるという問題がある。経腟採卵では、採取される卵子が3個以下である場合が全体の3割程度を占めることからも、こうした小数培養での胚発生率の向上が望まれる。一方、初期胚由来の細胞からなる栄養膜小胞は、妊娠認識物質を含め数種の因子を分泌することから、発生初期の胚と共培養することで胚発生を促進できる可能性がある。しかし、共培養のため栄養膜小胞を胚の発生培養用の培養液で培養すると小胞の発育が悪いことから、胚と栄養膜小胞の共培養に適した培養液への改善が必要である。そこで、栄養膜小胞と胚との共培養法を確立し、少数培養での胚の発生率の向上を図る。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
TCM199用いて栄養膜小胞を培養しても、小胞面積は殆ど増加せずRPMI1640に比べ発育状況は悪いが、TCM199にビタミンB群(ビタミンB1,B2,B4,B6,BcおよびビタミンB複合体を含んだMEMビタミン溶液)を添加して培養することにより小胞面積は増加し、栄養膜小胞の発育を改善することができる(表1)。
-
体外受精胚を1個培養する場合、受精後3日目からビタミンB群を添加したTCM199で栄養膜小胞と共培養することにより、卵丘細胞との共培養や他の培養液で栄養膜小胞と共培養する場合と比較して発生胚率および良質胚率が高くなる(表2)。
-
発生した胚の凍結融解後の生存率に差は認められないことからも(表3)、ビタミンB群を添加したTCM199培養液で栄養膜小胞と共培養する方法は、良質な胚を多く生産するために有効な方法である(表2)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
経腟採卵で採取卵子数が少ない場合において利用できる。
-
共培養に用いる栄養膜小胞は、20日齢前後の細胞増殖の盛んなものが望ましい。
-
栄養膜小胞と共培養する際には2日に1度培地交換を行う。
-
[具体的データ]
-

表1 培養液の違いによる栄養膜小胞の発育状況

表2 体外受精胚の1個培養での胚発生状況

表3 凍結融解後の胚の生存性
-
[その他]
-
研究課題名:乳牛胚の大量生産技術の確立
予算区分 :県特
研究期間 :2001〜2002年度
目次へ戻る