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肥育豚への低リジン飼料給与による胸最長筋の脂肪含量の増加


[要約]
肥育後期の雌豚に、必須アミノ酸であるリジンの含量が要求量の70%程度の低リジン飼料を給与すると、リジンの要求量を満たした飼料を給与する場合に比較して、胸最長筋の脂肪含量が2倍程度高くなる。

[キーワード]
低リジン飼料、胸最長筋、脂肪含量、家畜生理・栄養、ブタ

[担当]
九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・豚飼養研究室

[連絡先]電話096-242-7749	
[区分]九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜)、畜産草地	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
健康志向による低脂肪豚肉生産に対する需要が依然として高い一方、銘柄豚肉生産や良食味豚肉生産の観点から、筋肉中の脂肪含量が高い「霜降り豚肉」を生産する機運も、近年高まりをみせている。しかしながら、豚の筋肉中における脂肪蓄積にかかわる詳細な研究は少ないのが現状である。以上の背景から、豚の筋肉中の脂肪含量を高めることが出来る栄養制御方法について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 1日あたりの飼料摂取量と増体量は、低リジン区がそれぞれ120gおよび100g程度低くなり、飼料効率も低リジン区が低くなる傾向を示す。ロース芯面積には差はみられない(表2)。

  2. 背脂肪厚に有意な差はみられないが、胸最長筋(ロース)の脂肪含量は、対照区の3.5%に対し、低リジン区が6.7%となり、約2倍にまで高くなる(表2図1)。

  3. 脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化に関与するとされるPPAR-γのmRNAの胸最長筋における発現量は、低リジン区で3倍程度に高くなり、脂肪細胞から分泌されるホルモンであるレプチンのmRNAの胸最長筋における発現量も、低リジン区で3倍程度高くなる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 脂肪含量が高い豚肉生産技術開発のための基礎データとして活用できる。

  2. 去勢雄を同様の飼養方法で飼育した場合、過度の脂肪蓄積が懸念されるので、別途検討する必要がある。

  3. リジン以外の必須アミノ酸の効果、飼養期間、窒素排泄量については、別途検討する必要がある。また、赤肉生産量は低下する可能性がある。

[具体的データ]

表1 供試飼料の配合割合(%)


表2 飼養成績と枝肉形質


図1 胸最長筋における脂肪含量(%)


図2 胸最長筋におけるPPAR-γとレプチンの mRNA発現量

[その他]
研究課題名:飼料中の必須アミノ酸レベルが筋肉におけるグルコース代謝機構に及ぼす影響の解明
課題ID:07-04-05-*-01-01
予算区分 :形態・生理
研究期間 :2001〜2003年度


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