Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成15年度目次

胚盤胞を構成する内部細胞塊および栄養外胚葉細胞の簡便な染め分け法


[要約]
界面活性剤利用による核染色とエタノール固定を用いることで、胚盤胞を構成する内部細胞塊および栄養外胚葉細胞を簡便に染め分けでき、細胞数を測定することができる。

[キーワード]
家畜繁殖、胚盤胞、内部細胞塊、栄養外胚葉細胞、二重染色

[担当]
九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・繁殖技術研究室

[連絡先]電話096-242-7746	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
暑熱等の各種ストレスは初期胚の質およびその後の成長性に影響を及ぼすことが指摘されている。初期胚の成長性を評価するために胚盤胞期の細胞総数、特に胚盤胞における内部細胞塊(Inner Cell Mass;ICM)と栄養外胚葉(Trophectoderm;TE)の構成細胞数および構成比を検討することは重要である。胚発育性の評価は、一般的に胚盤胞の肉眼的形態に依っていることが多く、詳細な評価を行う場合、従来、補体を用いた免疫二重染色法が用いられてきた。しかしながら、この方法は染色操作の煩雑さからその導入には改善の余地が残されている。そこで、本成果では簡便にICMおよびTEを染め分けすることを目的とする。

[成果の内容・特徴]
  1. 胚盤胞を界面活性剤を利用した染色およびエタノール固定により簡便に染色する方法は次の通りである。(1)胚盤胞をプロピウムイオダイド(PI)溶液(0.1mg/ml 0.2% Triton X-100 in PBS)にて15〜30秒間1次染色。(2)ヘキスト33342溶液(25μg/ml 99.5% エタノール)にて摂氏4度遮光下で2〜3時間固定、2次染色。(3)グリセリン洗浄後、蛍光顕微鏡にてICM(青)、TE(ピンク)核数を測定(励起波長はPIで540nm、ヘキスト33342で352nm)。

  2. 免疫染色法を用いる従来法と比較し、作業工程数が非常に少ない(図1)。

  3. 2次染色は2〜3時間以上であれば、長時間染色しても結果は変わらず、従来法と比較し、本法は全く変わりなくICMおよびTEの染め分けを行うことができる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 界面活性剤を用いるので透明帯を除去する必要がない。

  2. 細胞の固定にエタノールを用いることで、ホルマリン等の有害な溶剤を使用しなくて済む。

  3. 一般の核染色法と異なり、細胞構成比を求めることで胚の質をより的確に評価する事が可能である。

  4. 染色状態によってはPI染色画像、ヘキスト33342画像を別々に取込み、後ほど合成しないと両者の構成比を数えることが困難な場合がある。

[具体的データ]

図1 従来法および本法の実験フローチャート


図2 二法から得られた画像の比較例(左:従来法、右:本法)

[その他]
研究課題名:胚移植における暑熱および酸化ストレスの作用機序解明とその制御による耐暑性向上技術の開発
課題ID:07-04-05-01-14-03
予算区分 :交付金
研究期間 :2002〜2005年度


目次へ戻る