甘夏における苦土・鉄欠乏症の発生と対策
- [要約]
- 甘夏で発生する葉脈間が黄化し、葉脈が緑色で網目状となる症状は、葉中のマグネシウム及び鉄の欠乏によるものであり、水酸化マグネシウム及びキレート鉄の施用により改善できる。
- [キーワード]
- ナツミカン、苦土欠乏症、鉄欠乏症、水酸化マグネシウム、キレート鉄
- [担当]
- 鹿児島果樹試・化学研究室
[連絡先]電話0994-32-0179
[区分]九州沖縄農業・果樹、生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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鹿児島県出水地域の甘夏で新梢硬化期に新葉の葉脈間が黄化し、葉脈が緑色で網目状となる症状は鉄欠乏の症状に類似しているが、その原因は不明なため、要因解明と対策の確立が望まれている。
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[成果の内容・特徴]
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葉脈間が黄化し、葉脈が緑色で網目状となる鉄欠乏様症状は、新梢が硬化する7月中旬に明瞭となる(写真1)。その後、葉脈間の緑色が徐々に濃くなり、10月上旬には症状は軽減される。
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鉄欠乏様症状を示す葉は、健全葉より葉中のマグネシウム及び鉄の含有率が低く、本症状は葉中のマグネシウム及び鉄の欠乏によるものである(表1)。
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出水地域の苦土・鉄欠乏症状が発生している甘夏園において、苦土資材として水酸化マグネシウムを10a当たり60kg、鉄資材としてキレート鉄を10a当たり3kg、4月に表層施用すると葉緑素計値は無処理区と比べて高く推移する(図1)。また、7月中旬以降葉中のマグネシウム及び鉄含有率が高く推移し(図2、図3)、鉄欠乏様症状の発生もみられない。
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葉中のマグネシウム含有率は7月中旬から9月中旬まで徐々に高くなり、その後低下する(図2)。また、葉中鉄含有率は7月中旬以降徐々に高くなる(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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土壌改良資材の施用は、年次的に計画をたてて実施する。
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10a当たりの資材費は水酸化マグネシウム60kgが3,120円、キレート鉄3kgが5,010円であり、合計8,130円程度となる。
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[具体的データ]
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写真1 甘夏の鉄欠乏様症

図1 葉緑素計値の推移(2002年)

表1 鉄欠乏様症を示す葉と健全葉の葉中無機成分含有率(2000年8月7日)

図2 葉中マグネシウム含有率の推移(2002年)

図3 葉中鉄含有率の推移(2002年)
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[その他]
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予算課題名:「不知火」、タンカンの樹勢強化・高品質安定生産技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2002年度
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