中山間地域における促成イチゴの長期採り栽培のための施設、資材の利用
- [要約]
- 防虫網2mmと遮熱資材の併用または、防虫網1mmを用いたオープンハウスの利用により、促成イチゴの長期採り栽培において、果実温を下げ7月にも硬い果実を生産できる。またアブラムシ、アザミウマおよびハダニへの農薬散布も慣行より削減できる。
- [キーワード]
- 防虫網、遮熱、オープンハウス、促成イチゴ、長期採り、農薬散布
- [担当]
- 福岡農総試・八女分場・中山間地作物チーム
[連絡先]0943-42-0292
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- 中山間地域において促成イチゴの収益を向上させる方法の1つとして、収穫期間を延長する長期採り栽培が考えられるが、夏季の高温や害虫が問題となる。一方、八女分場では、夏季高温期にもハウス内の昇温を抑え、害虫の被害を軽減できる防虫網組み込みオープンハウスを開発し、軟弱野菜を安定生産するための防虫網の種類や遮熱資材およびマルチ資材を選定した。
そこで、促成イチゴの長期採り栽培において、防虫網の種類や遮熱資材の利用が収量、果実品質及び防虫効果等に及ぼす影響を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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防虫網を組み込んだ施設では、晴天日における施設内の気温を慣行ハウスよりも低くできる。防虫網や遮熱資材の有無による気温の差はほとんどみられないが、果実温は、遮熱資材を併用した場合に透過光線が減少するため、低下する(図1)。
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7月の高温期において、防虫網2mmと遮熱資材の併用または、防虫網1mmの利用により、果実の硬さを維持できる(図2)。なお、防虫網の種類や資材の有無による収量の差はない(データ略)。
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防虫網の害虫抑制効果は高く、アブラムシ類、アザミウマ類およびハダニ類に対する農薬散布回数を、慣行のビニルハウスよりも削減できる(図3、一部データ略)。
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防虫網の利用により、アザミウマ類の果実への被害を軽減できる(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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主要野菜の栽培技術指針に登載し、中山間地域における促成イチゴの長期採り栽培のための施設、資材として活用、普及できる。
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7月以降は小玉果の割合が増加し、商品果収量が減少することから、標高140m程度の地域(八女分場等)における収穫時期は6月下旬までと思われる。
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遮熱資材には新たに開発されたものも含め多数あるので、遮熱効果やコストについて検討した上で選定する。
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[具体的データ]
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図1 晴天日における施設内の気温、果実表面温度及び照度(5月28日晴れ)

図2 イチゴ果実の硬度の推移(平成14年度)

図3 防虫網の種類とアブラムシ類の発生(平成14年度)

表1 施設の種類とアザミウマ類による果実の被害程度(平成14年度)
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[その他]
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研究課題名:省力的な促成長期どり栽培技術の確立
予算区分 :県特
研究期間 :1999〜2002年度
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