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ピリプロキシフェンテープ剤による媒介虫防除に基づいたトルコギキョウ葉巻症の省力的長期発生抑制


[要約]
トルコギキョウの生育初期からピリプロキシフェンテープ剤を草冠上に展張することにより、シルバーリーフコナジラミの発生を省力的に長期間抑制し、本虫が媒介するTomato yellow leaf curl virus(TYLCV)による葉巻症の発生も抑制できる。
[キーワード]
トルコギキョウ、葉巻症、TYLCV、シルバーリーフコナジラミ、ピリプロキシフェンテープ剤、長期発生抑制、省力

[担当]
長崎総農林試・環境部・病害虫科

[連絡先]0957-26-3330	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
最近、九州を中心に問題となっているトマト黄化葉巻病の病原ウイルス、Tomato yellow leaf curl virus(TYLCV)は、トルコギキョウにも感染し、節間の萎縮、葉の舟形葉巻および小葉化等の症状(以下、葉巻症と総称)を生じることから、花の品質にも大きな影響を及ぼして商品価値をなくす。本症は、1999年わが国で初めて長崎県で発生が確認され、その後宮崎県や熊本県などでも発生が認められている。本ウイルスはシルバーリーフコナジラミによって媒介されるため、本症の発生防止には、本種の防除が重要である。しかし、本種に対する登録薬剤が極めて少ないため防除対策に苦慮している。
そこで、花き類のコナジラミ類に対して登録を有するピリプロキシフェンテープ剤について、トルコギキョウにおける本種に対する防除効果を明らかにし、葉巻症防除への有効性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. トルコギキョウの生育初期からピリプロキシフェンテープ剤を草冠上に展張すると、シルバーリーフコナジラミの発生を長期間抑制し(表1図1)、同時に葉巻症の発生も抑制できる(図2)。

  2. 本処理法は、1回設置するとトルコギキョウの生育に応じて定期的に展張位置をずらす作業だけでよく、省力的である(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 6月上旬以降、シルバーリーフコナジラミの密度が上がると、葉巻症の発生抑制効果は低下するので、薬剤散布を併行する。

  2. 本剤設置による損益を試算すると、本試験のような少発生条件下では設置による有益性があまり認められないが(表2)、本剤設置は周辺圃場への保毒虫の移動抑制やすす病の発生抑制にも有効と考えられる。

  3. 施設開口部は、1mm目程度の防虫ネットで被覆する。

  4. 本剤に対するシルバーリーフコナジラミの抵抗性発達を防ぐため、年間の内、連続4ヶ月間以上の不使用期間を地域全体で設ける。

  5. 蚕に長期間強い毒性があるので、使用済みの本剤は焼却せず、設置に使用した手袋および空き袋なども含めて全てをビニール袋等に集め、取り扱いメーカーへ返却する。

[具体的データ]

表1 トルコギキョウにおけるシルバーリーフコナジラミの株当たり成虫数の推移


表2 ピリプロキシフェンテープ剤の設置による損益の試算 (10a当たり)


図1 トルコギキョウにおけるシルバーリーフコナジラミの株当たり成虫数


図2 トルコギキョウ葉巻症の発生推移(累積)


図3 ピリプロキシフェンテープ剤設置状況

[その他]
研究課題名:環境保全型農業推進のための技術・緊急対策
予算区分 :県単
研究期間 :2002年度〜


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