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大分県のサツマイモから単離したSPV-Gの性状


[要約]
大分県のサツマイモより、サツマイモウイルスG(SPV-G)を世界で初めて分離、同定した。本ウイルスは、サツマイモ斑紋モザイクウイルス(SPFMV)に近縁であり、サツマイモ斑紋モザイクウイルス強毒系統(SPFMV-S)との重複感染により、サツマイモ帯状粗皮病の病徴が激しくなる。

[キーワード]
サツマイモ、サツマイモウイルスG、サツマイモ斑紋モザイクウイルス、サツマイモ帯状粗皮病

[担当]
大分農技セ・生物工学部、九沖農研セ・地域基盤研究部・病害遺伝子制御研

[連絡先]0978-37-1141	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
SPV-Gは、中国のサツマイモで最初に発生が報告されたウイルスである。日本では、平成10年に本県及び長崎県で発生が確認され、その後宮崎県でも認められた。しかし、いずれの報告でも外被タンパク質遺伝子の塩基配列のみの情報であり、分離・同定には至っておらず、サツマイモの品質への影響は不明であった。
そこで、本ウイルスの分離・同定とサツマイモへの品質への影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. SPV-Gは、ポティウイルスであり、その形態は、約850nmのひも状粒子である。

  2. SPV-Gを各種検定植物に接種すると、アサガオでは葉脈透過(図1)や葉巻症状、Ipomoea setosaでは葉脈透過がみられ、Chenopodium amaranticolorの接種葉では局部病斑が認められる(表1)。

  3. アサガオ粗汁液中のSPV-Gの不活化温度は摂氏50〜60度、希釈限界は10-3〜10-4、摂氏20度における保存限界は1日以内である。
  4. SPV-Gの外被タンパク質は、355アミノ酸残基からなると推察される。また、今回分離したSPV-Gのアミノ酸配列は、中国のSPV-G(未分離)と93.5%の相同性を示す。

  5. SPV-Gの生物学的性状及び塩基配列は、SPFMVと類似している。

  6. 接種1作目のサツマイモの品質への影響は、SPV-Gの単独感染ではほとんど認められない。しかし、サツマイモ帯状粗皮病の病原ウイルスであるSPFMV-Sと重複感染すると、SPFMV-S単独感染の場合より本病の発病度が上昇する(図2図3)。

  7. 本県大野郡14地区34圃場における感染実態調査により、1地区の4圃場からSPV-Gが検出され、このうち2圃場でSPFMV-Sとの重複感染が確認されている。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本県でのSPV-Gの発生は、限定された地域や圃場でのみ認められており、その影響は、現在のところ小さい。発生地域の推移については、今後も注意が必要である。

[具体的データ]

表1 各検定植物に対するSPV-Gの病徴とRT-PCR-RFLPによる検出


図1 SPV-Gのアサガオでの病徴


図2 SPV-GとSPFMV-Sとの重複感染がサツマイモに与える影響


図3 重複感染株の作出方法

[その他]
研究課題名:弱毒ウイルスを利用したサツマイモ帯状粗皮病の防除技術の確立
予算区分 :助成試験(バイテク実用化型)
研究期間 :1996〜2003年度


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