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Pseudomonas viridiflavaによるキク花腐細菌病(新称)の発生


[要約]
露地栽培スプレーキクに、蕾が腐敗し花首が折れ曲がる症状の病害が発生し、発病部位からは細菌が分離された。細菌学的性質から分離菌株はP.viridiflava(Burkholder1930)Dowson 1939と同定し、本病を「キク花腐細菌病」とすることを提案する。
[キーワード]
花腐細菌病、キク、Pseudomonas viridiflava
[担当]
鹿農試大島・病害虫研究室

[連絡先]0997-52-3545	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
大島郡和泊町の露地栽培スプレーギクで、発蕾後花芯部分が褐変し、蕾が腐敗する病害が発生した。花が腐敗する病害にはAscochyta chrysanthemi Stevensによる花腐病が知られているが、症状が花首まで達すると花首が折れ曲がる点で異なった。本症状は栽培上重要な病害となることから、本症状の原因究明を行う。

[成果の内容・特徴]
  1. 本症状は開花前の3月に、露地ほ場で多発する。初期症状としてがく部分の褐変が認められ、その後腐敗が花芯部分に達すると花芯が褐色になる。腐敗部分が花首まで達すると花首は折れ曲がる。さらに進展すると、花首から茎へと腐敗する。
  2. 病斑部からは、NA培地上で、湿光を帯びた円形の汚白色から黄白色のコロニーを形成する細菌が高率に分離される。
  3. 分離菌をスプレーギクの蕾に接種すると、無傷接種では発病しないが、有傷接種で病徴が再現される。キク以外の植物に対して、有傷接種でインゲン、レタス、ブロッコリーに腐敗斑を形成する。
  4. 本菌はグラム陰性、好気性の極毛を有する桿菌で、グルコースを酸化的に分解し黄緑色蛍光色素を産生する。これらの特徴から分離菌株はPseudomonas属細菌と考えられる。
  5. 本菌をLOPAT法による蛍光色素生産性Pseudomonas属植物細菌の類別に則って類別するとP.viridiflavaと考えられる。
  6. 本菌の細菌学的性質を、P.cichorii(レタス腐敗病菌)、P.marginalis(ネギ腐敗病菌)およびP.viridiflava(キュウリ縁枯細菌病、レタス腐敗病)と比較すると、全30項目でP.viridiflavaと一致する。
  7. 以上の結果から、本菌をPseudomonas viridiflava(Burkholder 1930)Dowson 1939と同定し、病名をキク花腐細菌病(Bacterial blossom blight)とすることを提案する。

[成果の活用面・留意点]
  1. 発蕾期から開花期に発生する病害の防除対策の基礎資料となるとともに、病害診断に活用できる。

[具体的データ]

図1 P.viridiflavaによるスプレーキクの花腐症状


表1 スプレーギクの花腐れ症状からの分離菌株と、P.cichoriiP.marginalisP.viridiflavaとの細菌学的性質の比較

[その他]
研究課題名:奄美地域における花き病害虫の効率的防除体系の確立
予算区分 :県単
研究期間 :1998〜2002年度


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