アルファルファタコゾウムシ成虫の越夏場所
- [要約]
- アルファルファタコゾウムシ成虫は水田地帯周辺の樹林・山林内で越夏する。
- [キーワード]
- レンゲ、アルファルファタコゾウムシ、越夏
- [担当]
- 鹿児島県農業試験場・大隅支場・畑作病虫研究室
[連絡先]0994-62-4356
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
- 本種は、1982年に侵入が確認されたレンゲの重要害虫である。成虫の越夏場所については、国内では橋本ら(1987)によるマメ科雑草群落周辺での調査があり、発生地周辺の乾燥気味の樹皮下、街路樹、公園樹などの杉(檜)皮巻き付けの内側、ダンボールの隙間等で集合状態で越夏することが観察されている。しかし、レンゲほ場周辺での調査は行われておらず、また、水田地帯周辺では上記のような環境は多くは存在しないことから、主要な越夏場所が不明である。越夏前の成虫は、風下の方向に飛翔移動することが知られており(Webster
1912他)、水田周辺の山林で越夏すると推測されるため、水田地帯及び周辺山林等での探索とトラップ調査を行い、越夏場所を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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成虫のトラップによる捕獲数は、水田地帯の畦畔及び土手等では5月末まで多いがその後急速に減少し、7月中旬以降はほとんど捕獲されなくなる。水田に隣接する民家の庭等での捕獲数は少ない。したがって、上記の場所での越夏はほとんど行われない(図1)。
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成虫は水田に近い広葉樹林内(マテバシイ等)やイヌマキで多く見つかる。また、密度は低いがメタセコイヤやスギの樹皮の隙間等でも見つかる(表1)。
- 成虫は、樹上のクモの巣に絡まった枯葉、伐採枝等の枯葉、枯れ枝の穴や窪み、樹皮下、裂けた枝の隙間等に潜り込んで越夏する。成虫が1か所に10頭以上集合しているのものは希で、ほとんどは1頭〜数頭の集まりで越夏する。日本に当初侵入した生態型はエジプト型に近いとされ(大戸、1991)、橋本ら(1987)の観察は、エジプト型の集合状態で越夏する特徴(Bosch
et al.,1982)と一致していたが、本調査での観察結果はこれとは異なる。
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樹林・山林内でのこもトラップ調査では、水田から距離600mまでの範囲で成虫が捕獲され(図2)、300m以内の距離での捕獲数は比較的多かった(表1、図2)ことから、アルファルファタコゾウムシ成虫は、発生地の水田に比較的近い樹林や山林で主に越夏する。
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[成果の活用面・留意点]
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本種の水田地帯における発生動態を解明し、総合的防除技術確立のための基礎資料とする。
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成虫の越夏期における生存率、越夏場所からの離脱とレンゲほ場への侵入時期を調査するためのデータが得られる。
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[具体的データ]
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図1 水田地帯に設置したこもトラップでの成虫捕獲数の推移(2001年、鹿屋市祓川地区)

図2 樹林内に設置したこもトラップでの水田からの距離別成虫捕獲数(鹿屋市、2002年5〜11月)

表1 樹木、樹林内で越夏成虫が採集された場所と調査方法等(2001年7〜10月、鹿屋市野里地区)
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[その他]
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研究課題名:アルファルファタコゾウムシの蔓延防止技術の開発
予算区分 :指定試験
研究期間 :2001〜2005年
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