Competitive PCRによるカンキツグリーニング病の病原体DNAの定量
- [要約]
- カンキツグリーニング病に感染した植物組織中の病原体濃度をCompetitive PCR(競合PCR)により推定できる。
- [キーワード]
- カンキツ、PCR、定量
- [担当]
- 国際農林水産業研究センター・沖縄支所・総合防除研究室
[連絡先]0980-83-9111
[区分]国際農林水産業
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
- カンキツグリーニング病は、熱帯・亜熱帯のカンキツ産業のもっとも大きな生産阻害要因となっている。日本を含む各国のカンキツ栽培地帯で、同病の侵入と感染地域の拡大が問題となっている。
本病の診断は、病徴観察やPCR法などで行われているが、これらの手法では病原体の定量はできない。病原体の定量は、その感染機構の解明や、カンキツ品種の抵抗性の評価、農薬施用などの有効性の判定に有用である。そこで、Competitive
PCRによる病原体の定量法を開発し、本病の蔓延地帯における研究推進を目指す。
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[成果の内容・特徴]
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測定対象の遺伝子領域と同じプライマーで増殖するが少し短い競合DNAを作成し、このDNAを規定濃度でPCR反応液に添加することで、互いのDNA増幅に競合反応が生じる(図1)。
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測定対象のDNAと競合DNAの分子数が等しい場合には、増幅するDNAの分子数は等しくなる。そこで、競合反応の判定は、増幅したDNAの総量ではなく、分子数で比較する。
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競合DNAの分子数と、増幅したそれぞれのDNA分子数の比率は、対数軸のグラフ上で定数項が0の一次相関になる。この回帰式から測定対象のDNA濃度を推定できる(図2、図3)。
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測定対象DNA溶液にPCR反応を阻害する物質が共存しても、競合PCRでDNA濃度の測定には影響がみられない(図4)。
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罹病カンキツ組織中の濃度を測定することにより、カンキツの品種間差を明らかにできる(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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直接の測定対象がDNAであるので、測定対象となるDNAの抽出効率に注意する必要がある。
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PCR法によるDNA検出と同程度の設備と技術が必要である。
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リアルタイムPCRによる定量法に比べて,使用機器が比較的安価に揃うこと,PCR反応を阻害する物質が測定するDNA抽出液に含まれる場合でも正確な測定が可能であることが利点である。しかし,より多くの実験操作が必要なため,測定により長時間かかるので,多数の検体を測定する場合にはリアルタイムPCRの利用を検討すべきである。
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電気泳動像からDNA量を測定する画像処理ソフトウェアが市販されているが,発展途上国の研究機関で同様の研究を実施しやすくするために,当研究室では画像処理ソフトウェアを開発して測定に用いている。
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[具体的データ]
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図1 競合PCRの反応例

図2 増幅したDNA量でグラフ化

図3 増幅したDNA分子数でグラフ化

図4 競合PCRの定量性への可溶性デンプンの影響

表1 罹病カンキツ葉中肋の病原体濃度の測定例
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[その他]
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研究課題名:カンキツグリーニング病の伝播機構の解析
予算区分 :基盤
研究期間 :2002〜2005年度
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