害虫個体数調査データから世代あたり平均密度を計算するプログラム
- [要約]
- 本計算プログラムにより、積算温度法則に基づいて害虫個体数推移の調査データから世代区分を行い、各世代の平均密度を簡易に計算できる。
- [キーワード]
- 害虫個体数推移、個体群動態解析、有効積算温度、世代あたり平均密度、コンピュータプログラム
- [担当]
- 九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
[連絡先]096-242-7731
[区分]九州沖縄農業・病害虫、共通基盤・病害虫(虫害)
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
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作物の栽培期間中に複数世代を経過する害虫の個体群動態解析、とくに世代間増殖率を求めるためには、個体数推移データから世代あたりの密度を計算する必要がある。世代のピークが明瞭な場合には、ピーク密度を世代の代表値として用いることができる。一方、世代のピークが不明瞭な場合には、積算温度法則に基づいて世代区分を行い、各世代の平均密度を計算する方法(久野、1968)が有効である。この方法は、世代の最後までのデータがない場合でも、途中までのデータから平均密度を計算できるなどの利点もある。しかし、この計算は手順が煩雑なため表計算ソフトウェア等で行うことは難しい。そこで、計算を簡易に行うためのコンピュータプログラムを作成した。
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[成果の内容・特徴]
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計算プログラムはBASIC言語で書かれ、F-BASICVer.6.3(富士通(株))のランタイムファイル(無料)を用いてMicrosoftWindowsの各種OS上で動作する。プログラムは、有効積算温量の計算を行う部分と世代区分を行って平均密度を計算する部分に分かれている(図1)。
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プログラム1では、日別の最高・最低気温データから日別の有効温量の積算値を計算する。有効温量の計算は、対象害虫の発育零点の値をもとに三角法(坂神・是永、1981)を用いて行う。高温により発育遅延や発育抑制が起こる場合には、発育上限温度や発育停止温度の値を入れることも可能である。
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プログラム2では、プログラム1で求めた有効温量の積算値を用いて、個体数推移データの時間軸を、暦日から有効積算温量(日度)に置き換えたものが画面上に図示される(図2)。世代の起算点を画面上で決定すると、対象昆虫の1世代に要する発育所要日度(D)ごとに世代区分が行われ(図2)、世代あたり平均密度が計算される。
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計算に必要なデータはテキストファイルで準備し、結果はテキストファイルに出力される(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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このプログラムは、実際の個体数推移データだけではなく、フェロモントラップや予察灯などのデータの解析にも用いることができる。計算結果は、害虫の世代間増殖率の推定や、世代間増殖率を使った天敵による害虫抑制条件の評価・解析に活用できる。
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有効温量の積算値の計算は、この計算プログラムを用いないで、アメダスデータなどの毎時データから独自に計算してもかまわない。
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計算プログラムは、九州沖縄農業研究センター害虫管理システム研究室のホームページにて公開しており、自由にダウンロードして利用することができる。
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[具体的データ]
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図1 計算に必要なデータと計算の流れ図

図2 プログラムの実行画面の例

図3 出力結果の例
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[その他]
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研究課題名:天敵の行動制御による中山間地域における減農薬害虫防除技術の開発:天敵放飼技術に関する理論的研究
課題ID:07-08-04-01-13-03
予算区分 :新事業創出
研究期間 :2002〜2006年度
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