小粒多莢大豆系統九州143号を遅植栽培してカメムシ類の被害を回避する
- [要約]
- 小粒多莢大豆系統九州143号は,大粒の標準品種に比べて子実加害性カメムシ類の被害が少ない。また、7月下旬播種の遅植栽培では,普通期栽培に比べてカメムシ類の発生が少ない。このため,小粒系統を遅植することにより,子実加害性害虫の被害を大幅に軽減できる。
- [キーワード]
- ダイズ、九州143号、小粒多莢、耐虫性、カメムシ、遅植
- [担当]
- 九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫生態制御研究室
[連絡先]096-242-7732
[区分]九州沖縄農業、共通基盤
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
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九州のダイズ生産の重要な阻害要因のひとつとして虫害があり、とりわけ葉を加害するハスモンヨトウと子実加害性カメムシ類の被害が大きい。カメムシ類の防除は農薬散布に依存しているのが現状であるが、耐虫性品種や耕種的方法を利用して、環境負荷の少ない防除法の可能性を検証する。
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[成果の内容・特徴]
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小粒多莢系統の九州143号(100粒重約11g)は,熟期をほぼ同じくする大粒普及品種フクユタカ(100粒重約30g)に比べて、カメムシ類の被害(被害粒率)が少ない(図1)。試験区のカメムシ類の密度に違いがみられないこと(02年,03年の結果は図2参照)、また,被害粒数そのものは減少しないことから,この被害の差異は、本系統が小粒多莢であることにより補償作用が働き相対的に被害が軽減されたものと考えられる。
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九州で大豆は通常7月上中旬に播種されるが、播種時期を7月下旬に遅らせると、カメムシ類の発生が少なくなり(図2)、収穫後の被害粒率は低下する(表1)。
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小粒多莢の九州143号を遅植すると、カメムシ類の被害を大幅に軽減することが可能で、カメムシ被害が激しい年でもほぼ無農薬で安定的な収量を確保できる(表1)。なお、この方法はサヤムシガ等の他の莢害虫に対しても効果がある。
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[成果の活用面・留意点]
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カメムシ類の防除は,現在,農薬散布のみに頼っているが,減農薬の耕種的防除法開発への可能性が示された。
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九州143号は立枯性病害に弱く,転換畑では普及が困難である。
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遅植により栄養成長期が短縮されるので、収量を維持するためには、播種量を多くする(標準の1.5〜2倍)必要がある。
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[具体的データ]
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図1 普通期栽培のフクユタカと九州143号における収穫後のカメムシ等による被害粒率比較(平均とブロック間のS.E.)
図2 普通期と遅植栽培での開花期以降のカメムシ類の積算密度比較
表1 九州143号およびその他の大粒品種の害虫被害と収量構成要素1
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[その他]
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研究課題名:耐虫性品種および晩期栽培等による害虫被害軽減の実証
課題ID:07-08-03-*-09-02
予算区分 :交付金「持続的農業(IPM)」
研究期間 :2002〜2003年度
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