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重粘土地帯施設土壌でのキュウリのかん水施肥栽培における管理指標


[要約]
重粘土地帯施設キュウリ連作圃場は地力が富化しており、窒素施肥量5kg/10a程度でかん水施肥栽培が可能である。土壌中硝酸態窒素5〜10mg/100g、葉柄汁液中硝酸イオン濃度3000ppm以上、灌水点pF2.0を目安に施肥量、灌水量を加減し、生産安定を図る。

[キーワード]
重粘土地帯、かん水施肥栽培、硝酸態窒素、葉柄汁液、硝酸イオン濃度、pF

[担当]
佐賀農業セ・土壌環境部・土壌・肥料研究室

[連絡先]0952-45-2141	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
施設園芸栽培では、集約的な肥培管理のため、土壌養分は一般に集積傾向にあり、硝酸態窒素を中心とした施肥成分の流亡等、環境に及ぼす負荷が懸念されている。土壌養分環境の適正化を図るためには、残存養分や作物の栄養状態を考慮した効率的な施肥管理技術が必要である。これらに応える栽培管理技術の一つにかん水施肥栽培が挙げられるが、低平地の重粘土地帯における検討事例は少ない。そこで、重粘土地帯の施設キュウリ栽培土壌におけるかん水施肥栽培を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 施設キュウリ連作圃場では、全窒素、全炭素が高く土壌養分は富化しており、作付前の残存窒素や土壌からの窒素無機化量が多く、無窒素栽培でも土壌窒素供給量が窒素吸収量を上回る(表1)。

  2. 施設キュウリ連作圃場におけるかん水施肥栽培では、作期にかかわらず、窒素施肥量5kg/10a以下(0〜7kgN/10a)でも慣行施肥栽培と同等の収量が得られる(表2)。

  3. かん水施肥栽培では、慣行施肥栽培に比べて、土壌中の硝酸態窒素濃度は低く推移するが、5〜10mg/100g程度を維持できれば収量への影響はみられない(図1表2)。

  4. 窒素不足により減収する場合、葉柄汁液中の硝酸イオン濃度は1500ppm以下に低下するが、適正生育期間は3000ppm以上を示す(図2)。

  5. 作土下部(畝表面下25cm深部)の土壌がpF2〜2.5と乾燥した期間が続くと、それ以降の収量は20%前後減収する(図3表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 低平地重粘土地帯における施設キュウリのかん水施肥栽培に活用できる。

  2. 施設キュウリ連作圃場での成績であり、全窒素0.30%以上、可給態窒素で10mg/100g以上の地力が高まった土壌に適応する。

  3. 土壌養分の富化が少ない圃場では、上記の土壌および汁液診断によって施肥対応する。汁液診断のための葉柄採取位置は、主枝第10節または主枝第10節付近の側枝第1節とする。

  4. 液肥の施用は定植直後で1.5L/株/日、定植から活着以降は0.75〜1L/株/日を一日に3回に分けて給液し、その後はpF値に基づいて加減する。テンシオメーターは、点滴チューブ吐出孔から10cm程度離れた場所の深さ25cm程度(作土内下部)に設置する。

  5. 土壌の採土位置は、点滴チューブの突出孔から畝間方向に10〜20cm離れた位置の深さ10cmまでとする(平成14年九州沖縄農業研究成果情報第17号555ー556)。

[具体的データ]

表1 かん水施肥栽培(NO区)における窒素収支(2002年9月定植抑制栽培)


表2 施肥量の違いと商品果収量


図1 施肥窒素量の違いと土壌中の硝酸態窒素濃度(2002.9定植抑制栽培)


図2 窒素不足が収量及び葉柄汁液中硝酸イオン濃度に及ぼす影響(2002.5定植夏秋栽培)


図3 土壌pFが収量に及ぼす影響(2001.8定植抑制栽培)

[その他]
研究課題名:環境負荷軽減のための果菜類・切り花類の新栽培・施肥管理システム
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :2000〜2003年度


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