被覆尿素肥料の全量基肥施用による小麦子実タンパク質含有率の向上
- [要約]
- 小麦に対して溶出期間が30〜40日のリニアタイプとシグモイドタイプの被覆尿素を速効性肥料と組み合わせて全量を基肥施用すると、収量は慣行と同等以上であり、子実のタンパク質含有率は増加し、追肥作業を省略できる。
- [キーワード]
- コムギ、タンパク、被覆尿素
- [担当]
- 熊本県農業研究センター・生産環境研究所・土壌肥料研究室
[連絡先]096-248-6447
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- 小麦の子実タンパク質含有率は民間流通制度における品質目標項目であるが、九州産小麦は子実タンパクが低く、実需者の評価を落とす原因となっている。
そこで、溶出パターンの異なる被覆尿素肥料を組み合わせて全量を基肥として小麦に施用し、収量および品質に対する影響を検討する。
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[成果の内容・特徴]
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小麦栽培期間中における被覆尿素肥料の窒素溶出は図1のとおりであり、リニア型30日溶出タイプは期間を通じて溶出が持続し、シグモイド型の30日および40日溶出タイプでは3月後半から溶出が大きくなる(図1)。
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速効性肥料に溶出期間が30〜40日の被覆尿素肥料を組み合わせて配合し、全量を基肥施用すると、栽培期間を通じて窒素溶出を持続させることができ、特に出穂期からの溶出が多くなる(図2)。
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速効性肥料に溶出期間が30〜40日の被覆尿素肥料を窒素分で40〜60%組み合わせて配合し全量基肥施用すると、慣行栽培と比較して収量は同等以上であり、小麦子実のタンパク質含有率は増加する。このことによる熟期の遅れおよび倒伏は発生しない(表1)。また、追肥作業を省略することができ、費用面でも遜色はない(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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11月下旬播種を対象とする。
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大豆後作を対象としない。
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[具体的データ]
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図1 小麦栽培圃場における被覆尿素の窒素溶出(埋設法、2003年)

図2 被覆尿素を組み合わせた場合の窒素溶出(積算)

表1 成熟期の窒素吸収、収量および生育

表2 追肥作業に係わる経済性試算(10a当たり円)
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[その他]
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研究課題名:小麦に対するLPコート短期タイプの肥効試験
予算区分 :受託試験
研究期間 :2001〜2003年度
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