地力の異なる水田土壌での水稲に対する窒素施肥法
- [要約]
- 堆肥等有機物の長期連用により地力差を生じた水田土壌で、乾土100gあたりの可給態窒素量(摂氏30度湛水静置培養法)が13mg以上ある場合には、窒素施肥量を基肥・追肥ともに20〜30%減肥することにより、減収することなく、もみ中の窒素濃度を低く抑えることができる。
- [キーワード]
- 水田、水稲、地力、有機物、減肥
- [担当]
- 大分農技セ・化学部
[連絡先]0978-37-1141
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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大分県では、堆肥等有機物の効率的な地域内循環を図るため、耕地面積の大きな水田での利用を促進している。これら有機物の施用に当たっては、地力窒素や米の食味への影響を考慮した施肥体系を確立する必要がある。そこで、有機物の長期連用により地力差を生じた水田土壌で、収量およびもみ中の窒素濃度を考慮した水稲(ヒノヒカリ)の窒素減肥量を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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有機物の施用歴の違いにより分類した各試験区の乾土100gあたりの可給態窒素量(摂氏30度湛水静置培養法)は、地力低位土壌で10.1mg、地力中位土壌で13.2mg、地力高位土壌で14.3mgである(表1)。
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地力中位および高位土壌は、地力低位土壌の施肥窒素量9kg/10aに対し、10〜30%を減肥した8.1〜6.3kg/10a施肥でも、収量は地力低位土壌より10〜20%高い(図1)。
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食味と関連があるもみ中の窒素濃度は、地力中位及び高位土壌では10%減肥しても地力低位土壌より高くなるが、20〜30%減肥すると低く抑えられる(図2)。
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地力中位および高位土壌では20〜30%減肥しても、作物体の窒素吸収量は、地力低位土壌を約2kg/10a上回る(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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堆肥等有機物による土づくり推進および良食味米生産のための基礎資料として活用できる。
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本成果は細粒黄色土での結果であり、堆肥等有機物の施用を継続して行う水田に適応できる。
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本成果における窒素の20%減肥は、現行の大分県施肥基準7kg/10aとほぼ同等であり、30%減肥は現行施肥基準の10%減肥に相当する。
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減肥は基肥・追肥とも同率に行う。
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本成果に基づき、現地圃場で窒素減肥試験を行い、好成績を得ている。
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[具体的データ]
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表1 試験開始前の有機物施用歴および土壌化学性

表2 本試験(1999〜'02)における試験区の内容

図1 水稲収量の年次推移

図2 もみ中の窒素濃度

図3 水稲の全窒素吸収量
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[その他]
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研究課題名:有機物連用田における施肥管理
予算区分 :助成試験(土壌保全)
研究期間 :1999〜2002年度
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