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灰色低地土における抑制キュウリの簡易肥培管理マニュアル


[要約]
抑制キュウリにおけるリアルタイム診断には、土壌では簡易振とう法のEC、植物体では葉柄汁液中の硝酸イオンを用いるのが適当である。好適な生育を維持するためには、簡易振とう法ではECが約0.3〜0.4mS/cm、葉柄汁液では硝酸イオンが約4500〜5500ppmで管理するのが望ましいという抑制キュウリの簡易肥培管理マニュアルを作成した。

[キーワード]
キュウリ、リアルタイム診断、簡易振とう法、葉柄汁液

[担当]
宮崎総農試・土壌環境部・土壌肥料科

[連絡先]0985-73-2124	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
施設野菜では、高品質安定多収をねらいとして多肥栽培が行われる場合が多いが、その結果、土壌への養分蓄積や地下水汚染等の一因となっている。そこで抑制キュウリにおいて、安定生産の維持と環境負荷低減を目的とした、土壌・植物体のリアルタイム診断に基づく簡易肥培管理マニュアルを作成する。

[成果の内容・特徴]
  1. リアルタイム診断の方法として、土壌では簡易振とう法や湛水静置法のEC及び硝酸態窒素、土壌溶液ではEC及び硝酸態窒素、植物体では葉色(SPAD502)、茎径、部位別汁液の硝酸イオン、葉位別葉柄汁液の硝酸イオン等について検討した結果、比較的精度が高く、簡易な分析方法として、土壌では簡易振とう法のEC、植物体では15節前後の葉柄汁液の硝酸イオンによる管理が望ましい。

  2. 標肥区の栽培中の株間土壌(深さ0〜15cm)のECは、約0.2〜0.5mS/cmで推移する(図1)。簡易振とう法によるECについても常法とほぼ同様の値で推移するが、好適な生育を維持するためには簡易振とう法ECで0.3〜0.5mS/cmで管理する(表2)。

  3. 簡易振とう法による土壌のEC(x)と常法の硝酸態窒素(y)の間には高い正の相関があり(r2=0.80)、簡易振とう法のEC値から、土壌の硝酸態窒素濃度を推定することができる(y=37.4x-3.6)。
  4. 15節前後の葉柄汁液の硝酸イオン濃度は、約3300〜6500ppmで推移するが、好適な生育を維持するためには4500〜5500ppmで管理する(図2表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 灰色低地土における全面全層施肥による慣行栽培の結果である。

  2. 供試品種の穂木はシャープ1、台木はひかりパワーである。

  3. 土壌の簡易振とう方法は、容積で水5に対し土壌1を加え、1分間手で振とうする。植物体の簡易診断方法は、15節前後の葉柄を2cm程度に切断し、重量で葉柄1に対し水10を加えミキサーにかけた後ろ過し、得られた搾汁液を供試する。

  4. 簡易振とう法による土壌のEC(x)と常法の硝酸態窒素(y)の関係式は、土壌水分の状態で異なる場合がある。

  5. 施肥量は県基準、倍量、半量に変えて栽培を行った中で、生育が良く、土壌への養分蓄積が少ない県基準施肥量での4年間の結果である。

[具体的データ]

表1 施肥量の違いによる年次別総収量(t/10a、%)


図1 土壌(作土)中のECの推移(常法)


図2 葉柄汁液の硝酸態窒素濃度の推移(2002年、小型反射式光度計)


表2 土壌及び植物体の簡易診断結果

[その他]
研究課題名:キュウリの養分吸収特性とリアルタイム分析による管理手法の確立
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :1999〜2002年度


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