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イチゴ高設栽培からの廃液中硝酸性窒素除去システム


[要約]
養液栽培施設等から排出される廃液中の硝酸性窒素を除去するため、硫黄酸化細菌群の定着した石灰硫黄資材を用いた循環型廃液処理法を開発した。この方法は、現地のイチゴ高設栽培ハウスで高い廃液処理能力を有し、生産現場での有効な廃液処理法である。

[キーワード]
イチゴ高設栽培、硝酸性窒素、硫黄酸化細菌群、石灰硫黄造粒材、循環型廃液処理システム

[担当]
福岡農総試・土壌・環境部・環境保全チーム

[連絡先]092-924-2939	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
イチゴ高設栽培から排出される廃液中の硝酸性窒素については、脱窒資材を充填した浄化カラムを使用することで、効率よく除去出来ることを報告した(平成13年度成果情報)。しかしながら、大量の廃液処理が求められる現地栽培での適用には更に改良を加える必要がある。そこで、実際の生産現場に適用できる新たな廃液中硝酸性窒素除去システムを開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 脱窒処理能力の向上を目指し、循環型廃液処理装置(資材20L入り)を試作した。この装置で福岡農総試内のイチゴ高設栽培から排出される廃液(1日当たり廃液量:概ね30L、廃液中硝酸性窒素濃度:100〜200ppm)を処理すると、試験期間(約3ヶ月間)を通して硝酸性窒素除去率99%、処理液中の硝酸性窒素濃度を2ppm以下に低下することができる(図1)。

  2. 循環型廃液処理装置を基に、現地の高設イチゴハウス(約10a規模)に適用できる廃液中硝酸性窒素除去システムを開発した(図2図3)。

  3. 養液かけ流し式のイチゴ高設栽培からの廃液に対しては、現地対応型A除去システム(低濃度多量廃液処理タイプ、図2)が有効であり、1日当たり1,500Lの廃液(含有硝酸性窒素濃度:約40ppm)を1日で数ppm以下に処理することが可能である(データ略)。

  4. 養液循環式のイチゴ高設栽培からの廃液に対しては、現地対応型B除去システム(高濃度少量廃液処理タイプ、図3)が有効であり、1週間当たり1,000Lの廃液(含有硝酸性窒素濃度:約100ppm)を3日で数ppm以下に処理することが可能である(データ略)。

  5. 現地対応型の除去システムに要する費用(硫黄酸化細菌付脱窒資材代、集水シート代を除く)は両システムともハウス10a当たり概ね20万円程度である。また、イチゴ栽培期間中、循環ポンプ稼働に係る電気代は現地対応型A浄去システムで約5万円、現地対応型B浄去システムでは約10万円程度と見込まれる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 脱窒量に比例してカルシウムイオンおよび硫酸イオンが溶出し、廃液中の塩類濃度を上昇させるため、処理水の再利用は避け、既設の排水路等に排水する。

  2. 脱窒資材表面に菌泥等が付着する場合は新たに資材を投入し、脱窒能力の回復を図る。

  3. 浄化装置を屋外に設置した場合、厳冬期には低温により配管等が凍結するおそれがあるので、貯水槽内にヒーター(設定温度:摂氏25度前後)を入れておく。

  4. 処理槽内の水量が極端に低い状態での循環は避ける。

[具体的データ]

図1 循環型廃液処理装置(試作機)を用いた廃液中硝酸性窒素の除去


図2 現地対応型A除去システム


図3 現地対応型B除去システム

[その他]
研究課題名:イチゴの高設栽培における廃液浄化
予算区分 :経常
研究期間 :2001〜2002年度


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