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地力の異なる水田での点播水稲に対する被覆尿素の施用技術


[要約]
有機物を連用し地力の高まった水田で水稲品種「ヒノヒカリ」の点播栽培にリニア型50日溶出とシグモイド型45日抑制55日溶出の被覆尿素を1:2の配合割合で全量基肥に使うと、窒素を慣行施肥量の最大30%程度減肥でき、減収もほぼ5%以内となる。

[キーワード]
被覆尿素、点播、イネ、ヒノヒカリ、有機物、地力、熱水抽出性窒素

[担当]
九州沖縄農研・水田作研究部・水田土壌管理研究室

[連絡先]0942-52-0681	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
代かき同時土中点播では播種後落水管理を行うため、肥効調節型肥料を用いた施肥の方が窒素利用率が高い。また、暖地の「ヒノヒカリ」の湛水直播栽培においては肥効調節型肥料の1回全量施肥の場合、移植栽培の基準窒素施肥量の10%減とすることが施肥基準となっている。しかし、稲わら、稲わら堆肥及び麦わら等の有機物連用により地力が高まった条件での代かき同時土中点播水稲の減肥率は明らかでない。そこで、有機物長期連用条件下で地力窒素発現量が異なる水田における省力的な施肥技術を開発することをねらいとして、肥効調節型肥料の1つである被覆尿素の減肥率を収量・品質面から明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 土壌の可給態窒素は、熱水抽出性窒素で有機物無施用土壌(4mg/100g乾土以下)<麦わら連用土壌(5mg/100g乾土程度)<稲わら連用土壌、稲わら堆肥連用土壌(6mg/100g乾土以上)であり、この順に窒素地力が向上している(図1)。一方、無窒素区の窒素吸収量は有機物無施用(6kg/10aで地力低)<麦わら連用(7kg/10aで地力中)<稲わら連用(7.5kg/10aで地力中〜高)<稲わら堆肥連用(8kg/10aで地力高)である(図2)。
  2. 水稲品種「ヒノヒカリ」の代かき同時土中点播栽培において、リニア型50日溶出の被覆尿素とシグモイド型45日抑制55日溶出の被覆尿素を1:2の配合割合で全量基肥に使う場合、福岡県の目標収量(低地力水田で510kg/10a、中地力水田で530kg/10a、高地力水田で550kg/10a以上)および食味に関連する玄米タンパク質含有率(6.6%以下)から判断すると、地力の低い有機物無施用土壌では慣行施肥と同じ窒素7kg/10a程度が適する(図3)。

  3. 麦わら連用、稲わら連用および稲わら堆肥連用などの中〜高地力水田では、慣行窒素施肥量の最大30%程度減肥でき、減収もほぼ5%以内となり、玄米のタンパク質含有率も6.6%以下で慣行施肥の場合を超えない(図3)。なお、玄米の検査等級は慣行施肥とほぼ同等となる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 地力窒素の不明な圃場で小麦刈取後に土壌の熱水抽出性窒素を測定すれば、6月中旬播種の代かき同時土中点播水稲「ヒノヒカリ」の施肥設計の参考となる。

  2. 玄米タンパク質含有率6.6%は水分15%換算値で、乾物中窒素1.3%に相当する。

  3. 本成果は、稲わら及び稲わら堆肥を1963年、麦わらを1985年からそれぞれ連用している細粒灰色低地土水田の結果である。

[具体的データ]

図1 水稲作付前土壌の熱水抽出性窒素(2002年、2003年の平均)


図2 無窒素区の水稲窒素吸収量(2000〜2003年の平均)


図3 水稲の収量および玄米タンパク質含有率に及ぼす窒素施肥法の影響

[その他]
研究課題名:代かき同時土中点播栽培における省力施肥管理技術の開発
課題ID:07-02-08-01-01-03
予算区分 :直播稲作型
研究期間 :1997〜2003年度(平成9〜15年度)


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