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養分収支算出システムを用いた熊本県市町村の窒素収支


[要約]
三島ら(2004)の養分収支算出データベースにより算出された熊本県の余剰窒素は1年間で10a当たり18.4kg、環境リスクとなる窒素は23.8kgである。県内94市町村の窒素収支も明らかとなり、地域の営農活動が密接に反映している。

[キーワード]
窒素収支、環境負荷、データベース

[担当]
熊本県農業研究センター・生産環境研究所・土壌肥料研究室

[連絡先]096-248-6447	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]行政・参考	

[背景・ねらい]
環境保全型農業を行うには養分のインプット量とアウトプット量から地域に与える環境負荷を把握することが重要であり、特に各地域で多様な耕種や畜産が展開されている熊本県においては、市町村のような狭い範囲で養分収支が把握されることが望ましい。しかしながらそれが明らかにされた事例は極めて少なく、実際に調査を行うには多大な労力を要する。
ここでは三島ら(2004)が開発した県あるいは市町村単位で養分収支をパソコン上で算出するデータベースを用いて、熊本県および県内市町村の窒素収支とその傾向について検討を行う。

[成果の内容・特徴]
  1. 熊本県において窒素インプット量からアウトプット量を差し引いた窒素(余剰窒素)は1年間で10a当たり18.4kg、これに未利用堆肥分を含めた窒素(環境リスク窒素)は同23.8kgであり(図1)、どちらも都道府県平均値を下回る(図2)。

  2. 熊本県内94市町村における余剰窒素および環境リスク窒素は、図3および図4のとおり算出される。これらは化学肥料や家畜糞尿由来の窒素と高い相関を示しており(表1)、地域農業の形態を反映している。

  3. データベースのプログラムに新たにルーティンを組み込み、熊本県において減化学肥料栽培で化学肥料由来の窒素を慣行の2割削減し作物体の吸収量が変わらない場合をシミュレートすると、現行と比較して農地余剰窒素は79.5%、環境リスク窒素は84.1%に削減される。

  4. このように、本データベースを用いることで熊本県の市町村単位における農地の余剰や環境リスクとなる窒素量およびその制御要素を明らかとすることができる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は三島、松森ら(2003,土肥講要集49,P10)のデータベースを使用した。本データベースは市町村単位の農林水産統計データ、尾和(1996)の農作物養分吸収量、および多くの資料を元に養分フローの算出を行っている。畜産からの糞尿発生量は農林水産統計データを基に生育段階別畜種別に15種類の飼養家畜数を算出し、築城らの各種家畜の糞尿発生量(1998)を乗じている。

  2. 算出されたデータは持続的農業を図るための基礎資料として活用できる。

[具体的データ]

図1 熊本県の農業における窒素の流れ


図2 都道府県の農業生産にかかる窒素収支


図3 熊本県における農地の余剰窒素


図4 熊本県における環境リスク窒素


表1 熊本県内94市町村における面積当たりインプット窒素と窒素収支の相関係数

[その他]
研究課題名:栄養塩類の地表面収支に基づく行政区界単位のデータベース構築
予算区分 :依頼研究員
研究期間 :2002年度


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