新被覆栽培技術による産地卸売市場向けダイコンの導入効果と産地規模
- [要約]
- 産地卸売市場出荷を前提に、トンネル栽培を核とした新被覆栽培技術による青果用ダイコンの経営導入をシミュレーションすると、臨時雇用を活用した経営面積6ha規模(うち青果用ダイコン173a)の農家12戸による21ha規模の産地が想定できる。
- [キーワード]
- 新被覆栽培技術、ダイコン、経営評価、産地卸売市場、産地規模
- [担当]
- 九沖農研・総合研究部・経営管理研究室
[連絡先]096-242-7695
[区分]九州沖縄農業・農業経営
[分類]行政・参考
-
[背景・ねらい]
-
加工原料用畑作物生産を中心とした南九州畑作地域を対象に、春取りダイコン等の青果用野菜の導入による所得増加を目標とした、トンネル栽培を核とする新被覆栽培技術の開発が進められている。また、近年対象地域では雇用労働力を活用した比較的大規模な露地野菜経営が増加してきており、さらに、対象地域における野菜販路の一つである都城市公設地方卸売市場内の青果物卸売会社は春取りダイコンの取扱量を拡大させていきたいという意向を持っている。そこで、畑作経営モデルを用いたシミュレーションから、新技術による青果用ダイコンの導入や雇用労働力の活用による農業所得増加等の経営的効果を明らかにするとともに、産地卸売市場内の青果物卸売会社の将来的な青果用ダイコン取扱計画量に基づく新技術による青果用ダイコンの産地規模を提示する。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
新被覆栽培技術の資材費は、M字うね成型機年償却費9,000円、トンネル資材費は10aあたり約31,000円である(表1)。10aあたり作業時間は播種同時M字うね立て同時施肥同時マルチ作業1.25時間、トンネル敷設作業延べ8.8時間、トンネル撤去作業延べ3.9時間である(表2)。
-
対象地域で広範に作付けされている加工用野菜(ダイコン、かんしょ)を栽培する土地利用型経営に新技術を活用した青果用ダイコン(3〜4月出荷)を導入するシミュレーション分析(前提条件を表3に示す)から、青果用ダイコンは約52a導入され、その時の農業所得は慣行約364万円から473万円へ増加する(図1)。
-
青果用ダイコン収穫期に臨時雇用を導入する場合、臨時雇用人数の増加に伴って青果用ダイコンの作付面積は拡大していき、臨時雇用を2人導入するとき、青果用ダイコン作付面積は173aとなり、農業所得は643万円まで増加する(図2)。
-
都城市公設地方卸売市場内の青果物卸売会社は、春取りの青果用ダイコンについて将来の取扱量を日量2000ケース(1ケース10kg)へ拡大していく意向である。3月と4月に日量2000ケースの継続出荷を前提にする場合、臨時雇用を農家1戸あたり2人導入するときの単純試算から、新技術を活用した12戸の農家による21ha規模の青果用ダイコン産地が想定できる(表4)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
南九州畑作地域を対象とした分析であり、加工用かんしょは焼酎用、加工用ダイコンは漬物用である。
-
新被覆栽培技術は開発段階であり、現時点での技術係数をもとに分析した。
-
経営シミュレーションにはXLP(中央農研)を用いた。
-
[具体的データ]
-

表1 新被覆栽培技術資材費

表2 新技術作業内容と作業時間

表3 営農シミュレーションの前提条件

表4 青果用ダイコンの産地卸売市場出荷を前提とした産地規模

図1 慣行経営と新技術導入経営との比較

図2 臨時雇用導入と青果用ダイコン作付け面積および所得
-
[その他]
-
研究課題名:軽労畑輪作技術の経営的評価と営農モデルの策定
課題ID:07-01-02-01-04-03
予算区分 :暖地畑輪作
研究期間 :2001〜2005年度
目次へ戻る